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執筆者の写真高森明勅

「立皇嗣の礼」と秋篠宮殿下のお気持ち

更新日:2021年1月23日

「立皇嗣の礼」と秋篠宮殿下のお気持ち

朝日新聞(10月27日付)に「立皇嗣の礼」特集記事。その中に、安倍内閣当時、上皇陛下のご譲位に向けた法整備の為の有識者会議(天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議)の座長代理を務められた御厨貴氏(東京大学先端科学技術研究センターフェロー)の談話が掲載されている。


談話中に、秋篠宮殿下を巡る興味深い証言がある。


「上皇さまに関する議論が開始された当初は、秋篠宮さまが『皇太子』と呼ばれる可能性もあった。だが、途中で政府高官から、秋篠宮さま自身が『皇太子の称号を望んでおらず、秋篠宮の名前も残したい意向だ』という趣旨の説明があり、皇位継承順位第1位であることを示す『皇嗣』という称号に落ち着いた。秋篠宮さまの真意は今もわからない」と。


これに類似した内容は、以前にも報じられたことがある。


しかし今回の場合は、有識者会議の座長代理として、直接その情報に触れた人物の証言なので、独自の価値を持つ。私も特例法が制定された当時、次の天皇であることを踏まえた「皇太弟」「皇太子(皇室典範では“皇子”とするが、歴史上は“皇弟”その他も皇太子と称した例がある)」などの称号でなく、一般的な「皇嗣」とされたことに、少し意外な印象を受けた。


しかし、その後、秋篠宮殿下ご自身が将来、即位を辞退される可能性に言及されたとの報道があり(朝日新聞、平成31年4月21日付)、宮内庁もそれを否定したり訂正したり“しなかった”経緯から、殿下のご「真意」をおよそ想像することができた。


その意味では、近く内閣の判断と責任で行われる予定の(これまで全く前例が無い)立皇嗣の礼は、(秋篠宮殿下の次の天皇としてのご即位が既定の事実であるかのような印象を与えてしまうという点で)ご本人のお気持ちからは、かけ離れた儀式ということになろう。

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