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「万世一系」の皇統を途絶えさせる旧宮家子孫養子縁組プラン

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 4 時間前
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「万世一系」の皇統を途絶えさせる旧宮家子孫養子縁組プラン

皇室の弥栄(いやさか)を唱え、「万世一系」の皇統を強調する人らが、自ら進んで「皇統」を途絶えさせ、皇室を滅ぼそうとしているようにしか見えないのは、不思議だ。

無知なのか、悪意なのか、それとも…。


自民党などが強くこだわる旧宮家系子孫の国民男性を皇族との「養子縁組」によって皇族に加えるプラン。

次の世代からは皇位継承資格を認めようとしている。果たして妥当かどうか。

それを吟味する際に欠かせない前提知識として、改めて関連の資料をいくつか掲げておく。


①美濃部達吉『憲法撮要(改訂5版)』「祖宗ノ皇統ニ非(あら)ザレバ皇位継承ノ資格ナキコトハ我ガ古来ノ大法…皇統トハ唯(ただ)皇族タル身分ヲ有スル者ノミヲ意味シ、既ニ臣籍ニ入タル者ヲ含マズ」


②法制局(内閣法制局の前身)「皇室典範案に関する想定問答」「❲皇室典範❳第15条は、君臣の分を明確にしたものであつて、一旦(いったん)臣下となつた者及びその子孫は永久に皇族の身分を取得することがないことを明らかにしてゐるのである」

「❲第15条は❳臣籍に降下したもの及びその子孫は、再び皇族となり、又は新たに皇族の身分を取得することがない原則を明らかにしたものである。蓋❲けだ❳し、皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を保つためである」


③神社新報社·政教研究室(執筆=葦津珍彦氏)『天皇·神道·憲法』「占領下に皇族の身分を離れた元皇族の復籍ということが一応問題として考へられるであらう。

…その事情の如何(いかん)に拘(かかわ)らず、一たび皇族の地位を去られし限り、これが皇族への復籍を認めないのは、わが皇室の古くからの法である。…この法に異例がない訳ではないが、賜姓の後に皇族に復せられた事例は極めて少ない…。


この不文の法は君臣の分義を厳かに守るために、極めて重要な意義を有するものであつて、元皇族の復籍と云ふことは決して望むべきではないと考へられる」※この文章で対象とされているのは皇族として生まれ育った“元”皇族であって、その子孫ではないので、念の為。


④里見岸雄氏『天皇法の研究』「『万世一系』は…“一定の名分によつて限界づけられてゐなければならぬ”。

単に生物的事実による万世一系をいふならば、皇胤(こういん=皇室の子孫)国家たる日本の如きは、万世一系の出自たる者は殆んど無数である。『万世一系』の万世一系たる所以(ゆえん)は…特に皇族たる身分範囲内に於(おい)て体承せられある『万世一系』の意味であることは言ふ迄もない」


「『祖宗ノ皇統』とは、単に家系的血統を意味するだけでなく、『皇族範囲内にある』といふ名分上の意味を包含してゐるのである。然(しか)らざれば、我国の如き皇胤国家に於ては、君臣の分を定めることが不可能に陥るであろう」 ※この場合の「皇胤国家」とは、皇室の「生物的」「家系的」な血筋を引く子孫が国民の中に(もちろん旧宮家系子孫以外にも)数多く存在する国家という含意だろう。


⑤竹田恒泰氏『伝統と革新』創刊号掲載論文「『皇統』とは法律用語で、『皇統に属する』とは『皇統譜に記載がある』という意味と同一で、すなわち皇族であることと同義語である。…

歴代天皇の男系の男子には『皇統に属する男系の男子』と『皇統に属さない男系の男子』の2種類があり、皇位継承権を持つ現職の(原文のママ)皇族は前者に、また清和源氏·桓武平氏そして私のような旧皇族の子孫などは後者に該当する」


⑥宮内庁書陵部編纂『皇室制度史料 皇族 1』「皇族と臣家(しんけ)との養子関係を見ると、皇族が臣家の継嗣となったときは養家の姓を称するが、逆に臣家の子女が皇族の養子ないし猶子(ゆうし)となった場合には、それに依って皇族に列することは、なかった」


⑦内閣法制局·執務資料『憲法関係答弁例集(2)』「(憲法第2条の)『皇位は世襲のものであつて』とは、天皇の血統につながる者のみが皇位を継承することを意味し、皇位継承権者の男系女系の別又は男性女性の別については、規定していないものと解される」


皇位の「世襲」とは、“皇統による継承”を意味し、「万世一系」とは、それが過去·現在·未来にわたって揺るぎなく続く(べき)ことを意味するのであれば、親の代から既に国民の血筋となっている「皇統に属さない」(!)

旧宮家系子孫の系統にもし皇位が移動すれば、それはもう万世一系の皇統の“断絶”を意味する以外の何ものでもないはずだ。


▼追記

今月のプレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」は

前倒しで8月19日に公開。80年前の終戦における昭和天皇の役割について取り上げた。


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