top of page

「女系天皇」を否定する具体的、現実的な理由とは一体何か?

執筆者の写真: 高森明勅高森明勅


先に、皇位継承資格を「男系男子」に限定する理由について、今や「どうでもよい」(竹田恒泰氏、平成22年)、「どだい説明が出来ない」(谷口智彦氏、令和5年)という思考停止に行き着いていることを指摘した(8月17日公開ブログ)。


その裏返しになるが、そもそも女系天皇を否定する理由とは何か?


これについては、以下のような指摘がある(堀新氏『13歳からの天皇制―憲法の仕組みに照らして考えよう』)。


「(女系反対論の根拠として)『男系でないと、別な王朝になってしまう』という意見もありますが、それは『王朝は男系でなければ継がれない』という一定の定義というか観念を前提にしているので…『なぜ男系でつながっていないと、別な王朝になってしまうのか。


女系でつながっているだけでは王朝がつながらないと考える理由は何か』という疑問の答えることができません」


この否定論は、既に時代遅れになった井上毅の「謹具意見」(明治19年)、法制局「皇室典範案に関する想定問答」(昭和21年)の焼き直しに過ぎない。


これまでの経緯に即して言えば、男系でなければ王朝を受け継げないという観念は、古代シナに由来する男系血統の標識としての「姓」にしか根拠がない。しかし、姓の制度は明治4年に廃止され、社会意識としてもとっくに過去のものとなっている。


よって、“伝統”という融通無碍なマジックワードに逃げ込む以外になくなり、冒頭に紹介したような無回答による思考停止が完成した。


しかし、男系継承は側室制度=非嫡系継承の支えによって維持できた事実があり、わが国の伝統において男系絶対の考え方も存在しなかったことは、これまでに繰り返し指摘して来た。


例えば、古代の元正天皇や孝謙天皇が「未婚」だった背景に、女系皇族による皇位継承の可能性があったことは、桜田真理絵氏「未婚の女帝と皇位継承―元正·孝謙天皇をめぐって」(『駿台史学』第156号、平成28年)でも確認されている。


この点は、私自身も以前、一般書ながら拙著『日本の10大天皇』(幻冬舎新書、平成23年)で、先行研究を踏まえつつ、私なりの見方を示しておいた。

bottom of page