亀井静香氏『永田町動物園』(講談社)。
警察官僚から政治家に転じ、様々な政局を仕掛け、政界を暴れ回った同氏の視点から見た政治家の実態が、興味深く描かれている。
その中からいくつかのエピソードを紹介する。
「昔、こんなことがあったらしい。安倍家に泥棒が入り、(安倍)晋太郎先生(晋三元首相の父親)のコートを盗もうとした。
それを晋三が見つけて、追い払った。帰宅した晋太郎先生に、晋三がそれを自慢したら『コートくらい、やればよかったのに』と言われたと、晋三本人から聞いたことがある」
「小泉(純一郎)は’01年の総裁選で勝利した。俺も出馬していたのだが、塩川正十郎さんから直接頼まれたこともあり、議員投票の前に、小泉と9項目の政策協定を結んで辞退した。ところが小泉は、自分が勝った途端に協定を平気で破り、ただの1つも守らなかった。
就任直後、俺は官邸に3度も行って、こう抗議した。
『純ちゃん、お前、約束破ってばかりいるけど、どうするんだ』しかし小泉は、こうはぐらかす。『まあ亀ちゃん、そう言うな。そのうち、ちゃんとやるから』あとは例によって女の話ばかりである」
「自民党に復党してからの石破(茂)は、防衛大臣や農水大臣などを歴任し、目指すは総理というところまできた。…だが、このままのやり方では全然話にならない。石破がいまいち総理候補として存在感を示せないのは、なぜなのか。ズバリ言えば、総裁選のときしか動かないからだ。
戦いというのは、平時から兵を養い、ゲリラ戦から何から、どんどん仕掛けていくものだ。
…さらに大事なのは、仲間に金を配ることだ。俺が総裁選に出たときは、15、6億円くらいかかった。盆暮れもカネを配る。そうやって支えてくれる人間を増やしていかなければ、総理総裁なんてなれっこないのだ」
「政治家である以上、少し毒を持っているくらいが、ちょうど良い。
自分の意思で行動できる者が頭角を現す世界だ。(武田)良太には『年齢から考えれば、塀の中に落ちないかぎり、お前は総理になれる』と言っている。
能力のある政治家というものは、みんな刑務所の塀の上を走っているようなものだ。俺も塀の上を走り続けたが、ついぞ落ちることはなかった」
「(平沢勝栄は)国会会期中も、わずかでも時間が空けば地元に戻り、会合やお祭り、冠婚葬祭をハシゴする。自分が行けないときも秘書に向かわせる。
タバコを買うときは、1箱ごとに買う店を変え、散髪するときは毎回違う店だ。
選挙民に顔を覚えてもらう意味もあるが、最大の目的は、地元の人たちが何に困っているか、生の声を聞くためだ。平沢が選挙に強いのは、このマメさに尽きる」
「竹下(登)さんが総理のとき…いつものように約束を反故にされた俺は、竹下さんの部屋に怒鳴り込んだ。…竹下さんは表情を変えない。いつもの口癖で『そうだわなぁ』と言うばかりだ。
腹が立った俺は言ってやった。
『竹下先生、あなたは大総理で俺はぺーぺーだから、政治家として俺はかないっこない。しかし死ぬのはあんたが先だ! あなたの命日に墓に行って、小便かけてやるから覚悟しろ!』さすがの竹下さんも『そんなこと言うなよ、勘弁しろよ』と困った顔で苦笑いしていた」(続く)
追記
7月10日の投開票が見込まれている参院選の候補者の顔ぶれがほぼ出揃った。
既に事実上の選挙戦に突入している。
選挙後の皇室制度改正への取り組みを見据え、皇位の安定継承を願う有志国民が政治家にアプローチできる、貴重な機会だろう。