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  • 高森明勅

皇室の方々の「家族の一体性」を破壊する政府プランの危険性


有識者会議

政府は、先頃のをそのまま、自らの検討結果として国会に伝えた。

しかし、その内容は予想を越えた酷さと言わねばならない。


その中でも、(憲法第1章が“優先的”に適用され、皇統譜に登録される)皇族と(同第3章が“全面的”に適用され、戸籍に登録される)国民が夫婦、親子などとして「1つの世帯」を営むという制度設計は、さすがに無理があり過ぎるだろう。



女性皇族と国民男性の家族?



政府が提案したプラン①では、内親王・女王方はご婚姻後も、そのまま皇族の身分を保持される。一方、その配偶者やお子様は国民であり、国民としての自由や権利を全て保障される(有識者会議報告書10ページ)。


それは、一般国民から内親王・女王と“一体”と見られることが避けにくい、配偶者やお子様が特に制限なく、政治・経済・宗教などについて自由な活動が認められることを意味する。


そのような制度が憲法上、「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」(第1条)であって、「国政に関する権能を有しない」(第4条第1項)とされる天皇及び皇室のお立場と両立し難いことは、

既に指摘して来たし、これからも様々な形で発信し続けるつもりだ。


しかし、ここでは別の切り口として、ご家族としての“一体性”が果たして保たれるのか、という問題を提起したい。



皇族家族の一体性



そもそも、皇室典範では皇族における「家族の一体性(=身分の同一性)」を明確に求めている。

そのことがよく分かるのは、第13条の規定だ。


「皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除き、同時に皇族の身分を離れる。但し、直系卑属及びその妃については、皇室会議の議により、皇族の身分を離れないものとすることができる」


法律を読み慣れていない人には、すぐにピンと来ないかも知れない。

分かりやすく噛み砕くと以下の通り。


皇族のご家族において、何らかの理由(自らの意思や懲戒的な事情など)で夫(親王・王)が皇籍を離脱する場合は、原則として妻(妃)もお子様やお孫様など(直系卑属)及びその妻(妃)も、同じく皇籍を離脱する(皆様、一緒に国民となられる)。


これは「家族の一体性(=身分の同一性)」が求められているから、と理解できる。


但し、例外が2つある。


その1は、「女子」が既に他の皇族に嫁いでおられた場合。

その方やそのお子様などは、その女子の夫(親王・王)と同一の皇族の身分のままとする。これは、女性皇族の場合、ご婚姻相手の男性皇族の身分との“同一化”という要素が加わる為だろう。


その2は、皇室会議が特に“例外扱い”を認めた場合には、お子様など(直系卑属)やその妻(妃)は、そのまま皇籍にとどまられる。これは、皇族数の減少を防ぐとか、懲戒の連座的な適用を避けるなど、特別な事情を想定できる。この場合も、皇籍を離れる男性皇族の妻(妃)は例外扱いされない(元々皇族だった場合も、夫と共に皇籍を離れる)。


それだけ、夫婦の身分の同一性への規範的要請は“より”強いことを示す。



「象徴」の立場を支える異質性



憲法第2条に「皇位は世襲」との規定がある。にも拘らず、それに“マイナス”に作用するはずの、

親と共に「直系卑属」も皇籍離脱する規定を、皇室典範はことさら設けている。これは何故か。


それは「家族の一体性(=身分の同一性)」という価値を優先した為に他ならないだろう。


「家族の一体性(=身分の同一性)」を優先したのは、漠然と一般通念に依拠にしたのではなく、憲法上の明確な根拠がなければ、法律に過ぎない皇室典範が最高法規である憲法の「世襲」規定

(第2条)の“足を引っ張る”ような制度を敢えて設けることは、できないはずだ。


その根拠は何か。


憲法は「天皇」について、「象徴制」と「世襲制」を定めている。

そこから消去法で考えると、根拠は恐らく「象徴」規定(第1条)と考えられる。


“象徴するもの”と“されるもの”との関係は、“代表するもの”と“されるも”のが互いに同質であるのに対し、「異質」であることが前提となる。その異質性を担保する為に、皇室を構成する皇族の家族の中に「国民」が“混在”することは、制度的に除外される必要があった。


つまり、皇族における「家族の一体性(=身分の同一性)」は、天皇の“象徴として立場”を支える基礎だったと考えられる。



養子の縁組前の子は国民



ところが、政府のプラン②旧宮家系男性の養子縁組案でも、縁組の時点で既にお子様がいた場合、そのお子様は国民のままとするという(報告書12ページ)。ここでも、同じ家族の中に、“親が皇族で子が国民”という形で、皇族と国民が混在する可能性を抱えている。

更に縁組後、お子様が生まれ、そのお子様に皇族の身分が(トリック的に!)認められる場合

(この点、報告書自体には何も言及がない)、兄弟姉妹の中で、縁組“前”に生まれた子=国民と縁組“後”に生まれた子=皇族が混在することになる。


ちなみに、養子の妻の位置付け(皇族になるのか、国民のままなのか)については、縁組前後に関わらず、全く言及がない。驚くべき杜撰さだ。


いずれにせよ、家族の中に皇族と国民が混在する政府のプラン①②は共に、憲法及び皇室典範が求める「家族の一体性(=身分の同一性)」という、象徴天皇の基礎となる価値を損なう。勿論、当事者の方々にとっても、不自然極まりない制度だろう。こうした点からも、政府の提案はとても受け入れられない。


追記


皇室典範第13条については、横田耕一氏「『皇室典範』私注」(横田氏ほか編『象徴天皇の構造―憲法学者による解読』平成2年)、園部逸夫氏『皇室法概論』(平成14年)などに解説がある。それらを踏まえて、私独自の視点から見解を述べた。

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