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執筆者の写真高森明勅

女性・女系天皇、女性宮家という選択肢が抱える難題とは?

更新日:2021年9月9日


女性・女系天皇、女性宮家という選択肢が抱える難題とは?

皇位の安定継承を目指す具体的な選択肢として、実現可能で、かつ妥当なのは、女性・女系天皇を認め、女性宮家を創設するという方策以外にないだろう。


しかし率直に言えば、それらも難題を抱えている。 たやすく予想し得る懸念事項は、以下の3点だろう。


①当事者となられる内親王方などご本人のお気持ちはどうか? ②果たして国民男性からご結婚相手が現れるか? ③男系男子に頑固に拘る少数の反対論者が残り続けるのではないか?


それぞれどう考えるべきか。


《内親王方ご本人のお気持ちは?》


①について、対象が国民である場合は、憲法第3章が規定する基本的人権を享有する主体なので、勿論、ご本人の自由意思が大前提になる。旧宮家案の“最初の”ハードルはそこにあった。

しかし、憲法第1章の適用を受ける(一方、第3章の全面的な適用は受けない)内親王方などの場合、制度の建前として、自由意思は必ずしも絶対的な前提とはならない。

対象となる内親王方などは、物心がついて以来、長年、女性・女系天皇、女性宮家を巡る議論が行われて来た事実は、当事者ゆえに熟知しておられるはずだ。だから、唐突な話ではもとより無い。むしろ、「世襲」の「象徴」天皇という制度を維持するのであれば、決して避けられない課題に対して、政治の怠慢と国民の無関心によって、現在まで結論が先延ばしされて来たことの方が、申し訳なかった。


この間、ご自身の将来が見通せない辛さを、ずっと抱え続けてこられたはずだ。これ以上、宙ぶらりんの状態を強制し続けることこそ、残酷な仕打ちだろう。だから、その意味からも、一刻も早く決着をつける必要がある。

もしご本人に辞退されるお気持ちが強い場合は、個別に皇室典範の第3条(皇位継承の順序の変更)や第11条(皇族の身分の離脱)などの適用が検討されるべきだろう。


《ご結婚のお相手は?》


②は、政治(政府・国会)が関与できる領域ではない。 お相手は国民である以上、上記の通り、もっぱら当事者の自由意思に委ねられるべき事柄なので、制度上の議論にはなじまない。しかし、これまでの週刊誌やネット上などでの無軌道な皇室バッシングの様子を見ると、皇族の男女に関わりなく、ご結婚のハードルが絶望的なまでに高くなっているのではないか。

国民的な課題として、皇室の方々の人格や名誉が、一方的に傷付けられ続けるこれまでのような状況は、いつまでも放置できない。畏れ多いが、秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下のご結婚も、 (男系維持なら、必ず男子を生まなくてはならない重圧を避け難い、という事情に加えて)いつバッシングの標的にされるか分からない状態が続けば、困難を極めるだろう。


《頑固な反対派は?》


③について、私の肌感覚として、さすがに頑固な「男系」固執派の数は、次第に少なくなっているように感じている。しかし、上皇陛下のご譲位に対しても、「権威の二重化」が起こるなどと全く見当外れの懸念を述べ立てて(これは、ご譲位後の上皇陛下のお振る舞いへの不信感を前提としなければ、出て来ないはずの不敬・非礼な言い分だった)、最後まで反対した少数者が存在した (令和の今、彼らが主張したような状態は、国内のどこにも存在しない)。


残念ながらそのような者は、皇位の安定継承への取り組みにおいても、同様に残り続けるだろう。しかし、そのような少数者に配慮して、何より大切な、皇位の将来を確保する為に欠かせない、唯一無二の方途を断念してしまっては、本末転倒と言わざるを得ない。


上皇陛下のご譲位によって、平成から令和への御代替わりが実現した時の全国民的な祝福の前には、一握りのご譲位反対派の存在など、まさに物の数ではなかった事実を思い起こせばよい。



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