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  • 執筆者の写真高森明勅

皇族数確保に目的をスリ替えた有識者会議が分かっていること


皇族数確保に目的をスリ替えた有識者会議が分かっていること

皇位の安定継承を目指すはずだった有識者会議。

いつの間にか、最も肝心な目的それ自体を、“スリ替えて”しまった。

7月9日の第9回会合の討議資料には、「確認された議論の前提」として、こんなことが書かれている。


「皇位継承の問題とは“切り離して”、皇族数の確保を図ることが喫緊の課題」と。


同会議の本来の設置目的である「皇位継承の問題を切り離して(!)」は、同会議自体の自己否定に他ならない。それを「議論の前提」として「確認」したとは驚きだ。


〈皇位の安定継承と現在の継承順位維持は矛盾する〉


何故、こんな公然たる任務放棄に走るのか。

それは、同資料に答えがある。


「今上陛下から秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下という皇位継承の流れををゆるがせにしてはならない」と。

この「継承の流れ」自体、決して確定的なものではない。

そのことは、これまでも繰り返し述べて来た。

但し、それを建前上でも「ゆるがせにしてはならない」と言い張らないと、一部から強硬な反対が予想される「皇位の安定継承」という、同会議の本来の目的と真正面から向き合わなければならなくなる。


つまり、“逃げ口上”としてそれは有効なのだ。

言い換えると、皇位の安定継承と現在の継承順位の維持が矛盾することは、さすがに同会議でも一応、理解できているようだ。

では両者が何故、一部から強硬な反対が予想され、今の継承順位と矛盾するのか。

それは、皇位の安定継承の為には女性天皇・女系天皇を可能にするしかない為だ。

そこまで分かっているからこそ、逆に二の足を踏むことになる。


〈旧宮家案は安定継承に繋がらない〉


更に、「皇位の安定継承」を切り捨て、目的をずっと後退した「皇族数の確保」にスリ替えた上で、検討対象にしているのが、他ならぬ一代限り(!)の女性宮家と、旧宮家系を含む国民の中の「皇統に属する男系の男子」が、主に“養子縁組”によって皇族になることを可能にするプラン。


これは、何を意味するか。

「養子縁組」案では、一代限りの女性宮家と同様に、「皇位の安定継承」には決して繋がらず、目先だけの「皇族数の確保」策でしかないのが、ちゃんと分かっているーということに他ならない。

もし「皇位の安定継承」に繋がると錯覚していれば、肝心な“安定継承”の看板をスゴスゴ下ろすような、みっともない真似はしなかったはずだ。


〈女性天皇も先延ばしできない課題〉


その上、同資料には、「前回の主な議論」として、会議メンバーのこんな発言も収めている。


「皇位継承資格の女性への拡大については、悠仁親王殿下の御年齢や御結婚などとの関係における然るべき時点で、将来的に検討する余地がある事柄ではないか。

これは、男子出生へのプレッシャーの緩和や悠仁親王殿下のお子様の人生との関係から見ても重要なことではないか。

このように考えると、それほど長期の時間的余裕があるともいえないのではないか」と。


いずれ女性天皇を可能にする方策に踏み切るべきことを示唆し、「時間的余裕があるともいえない」と述べている。

これは勿論、正論だ。


もし女性天皇への可能性が閉ざされたままなら、どうなるか。

誰が考えて分かるはずだ。

悠仁親王殿下のご結婚相手は、必ずお一方以上の男子を生まなければ、長い歴史を持ち、現に国民統合の象徴として憲法上もすこぶる重大な役割を担っておられる天皇・皇室の存在を、“自分のせいで”途絶えさせてしまう、という想像を絶する重圧に直面するのを、避けられない。


その重圧を突破して、ご結婚に踏み切れる国民女性が、果たして現れるかどうか。

決して楽観はできない。


ならば、「然るべき時点で、将来的に検討する余地がある」などと、悠長に“先延ばし”するのではなく、元々、「皇位の安定継承」という課題を公的に与えられている同会議でこそ、検討すべきではないのか。

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