加藤勝信内閣官房長官は3月16日の記者会見で、皇位の安定継承策を議論する有識者会議を設置することを発表した。
上皇陛下のご譲位を可能にした特例法の附帯決議では、同法施行(平成31年4月30日)後、「速やかに」検討をスタートさせる約束だった。政府はそれをグズグズ先延ばしして、昨年11月に“皇女プラン”が急浮上。皇位の安定継承には繋(つな)がらず、当事者にもご無理を強いる、最低のプランだった。
政府サイドはこれで当面、やり過ごそうと図ったものの、何とか民間、野党が力を合わせて押し戻すことが出来た。この時は、共同通信と読売新聞がスクープ。我々が準備していた参院議員会館でのシンポジウムが絶好のタイミングで開催できる巡り合わせになった。
その問題提起を国民民主党、立憲民主党がそれぞれ真正面から受け止め、遂に大島理森衆院議長が政府に釘を刺す運びとなった。宮内庁も、当事者でいらっしゃる皇室のご内意も伺わないで、勝手に無茶なプランを進めようとする首相官邸のやり方に、婉曲的に難色を示していた。
“皇女プラン”という逃げ道を塞がれた以上、いつまでも先延ばし出来ない局面を迎えていた。だから、今回の加藤長官の発表はむしろ遅すぎたと言うべきだろう。しかし、有識者会議の設置を正式に発表したからには、政府はもはや後戻り出来ない。その点は歓迎できる。
だが、上皇陛下のご譲位を可能にした特例法の際の有識者会議の迷走ぶりを持ち出す迄もなく、同会議に過大な期待は禁物だろう。特にこの度のテーマは、国家・国民にとって最重要課題だ。問題の重大性に照らしても、内閣の一諮問機関に過ぎない同会議ではなく、国民の代表機関である国会の全党・全会派の総意によって、基本的な方向性が決められるべきだろう。
その際、各政党は、圧倒的多数の国民が何を求めているかを真剣に見極め、真の民意に立脚した判断を行う必要がある。更に、心ある国民は今こそ、皇室の将来に寄せる自分たちの思いを、しっかりと政治の場に届けなければならない。念の為に、附帯決議が政府に求めていた検討課題を確認しておく。
「政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」
ーもう、誤魔化しは許されない。