• 高森明勅

皇室の「聖域」性



皇室典範では、皇室の「聖域」性を守る為に、様々な配慮が払われている。 その最たるものは第15条の規定だろう。


「皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない」


これは、皇族以外の者は、天皇や男性皇族(親王・王)とのご結婚という人生の一大事を介してのみ、皇族の身分(皇籍)を取得できることを定めたものだ。 そのご結婚に際しては、必ず「皇室会議」の同意を必要とする(第10条)。

皇室会議は、三権の長(衆参両院議長・首相・最高裁長官ら)が一堂に会する唯一の国家の機関で、更に皇族の代表も加わっておられる(第28条第2項)。


国の諸々の機関の中でも、取り分け重要な位置を占めていると言えよう。 その同意が無ければ婚姻は成り立たず、当然、皇籍を取得することは出来ない。 まさに皇室の「聖域」性を守る為の仕組みだ。

一方、女性皇族(内親王・女王)が天皇・皇族以外の者と結婚される場合、今のルールでは皇籍を離れることになる(第12条)。

なので、皇室会議の関与は無い。

聖域たる皇室に入る場合と、皇室から出て、国民の仲間入りをされる場合とで、しっかり対応を区別している。 そこに一貫したロジックを認めることが出来るだろう。


更に、皇族以外の者とご結婚された(つまり一旦、皇籍を離れられた)方が、畏れ多いことながら万が一、離婚された時は、一体どうなるか。

国民同士なら普通、実家に戻る(婚姻前の氏への復氏)。

ところが、ご結婚によって一旦、皇籍を離れられた方は、(既に“皇族以外の者”なので)先の条文の規定によって、皇室に戻ることが許されない(「皇族の身分を離れた者及び皇族となった者の戸籍に関する法律」第3条にはご離婚後、「その者につき新戸籍を編製する」等の規定がある。


これは、皇統譜ではなく「戸籍」の対象、つまり“国民”であり続けることを意味する)。 たとえ、血縁において天皇と直接の親子のご関係にあったとしても、一度皇籍を離れて国民の仲間入りをされた場合は、二度と再び皇族の身分に戻ることはない。

皇室と国民の“区別”を厳格にする為に、とても厳しいルールになっている。

第15条の立法意図について、皇室典範が制定された当時、法制局(内閣法制局の前身)は以下のように説明していた。


「臣籍(しんせき)に降下したもの及びその子孫は、再び皇族となり、又は新たに皇族の身分を取得することがない原則を明らかにしたものである。

蓋(けだ)し、皇位継承資格の純粋性(君臣〔くんしん〕の別)を保つためである」(「皇室典範案に関する想定問答」)と。


皇室と国民の“身分・立場”上の違いを、(元皇族やその子孫だからと言って)血縁・血統によって曖昧にすることは出来ない。

それが、皇室の「聖域」性を守る為の大切なケジメなのだ。


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