菅新内閣の発足。この際、新しい内閣がスタートする為に、「天皇」という地位がどのように関与しているかを、改めて確認してみよう。
誰でも気付く役割は、首相の「任命」と閣僚の「認証」。9月16日、皇居で首相親任式と閣僚認証式が行われた。このことは、ニュースでも取り上げられている。だから、人々に広く認識されただろう。
首相の任命は憲法6条1項、閣僚の認証は7条5号に、それぞれ根拠規定がある。ここで見落とせないのは、首相を“任命する”天皇は、“任命される”首相より、憲法上、「上位」に位置付けられている事実だ(閣僚を任命する首相が任命される閣僚より“上位”にあるのと同じ)。
又、遡(さかのぼ)って、菅義偉氏が首相に「指名」されたのは、同日の臨時国会での指名選挙の結果だった。つまり、国会の「召集」がその前提だ。では、国会は“誰”によって召集されるのか。
これも、「天皇」に他ならない(天皇の“詔書〔しょうしょ〕”が下される)。翌日の国会開会式への天皇陛下のお出ましと、お言葉(これは上記詔書とは別)の読み上げは印象に残っても、こちらの事実(国会の召集自体)は見逃されがちではあるまいか。
憲法7条2号にその規定がある。国会は「国権の最高機関」(41条)とされている一方、同号では(“招”集ではなく)「“召”集」という文字を使っている。召集とは「上位の者が下位の人々を呼び集めること」(明鏡国語辞典)。
憲法が前提とする国家秩序において、天皇は(内閣だけでなく)国会より更に“上位”に位置付けられていることが分かる。このように、新しい内閣の発足に当たり、天皇は“起点”となる臨時国会の「召集」と、“終点”となる同国会で指名された首相の「任命」、その首相が任命した閣僚らの「認証」という、いずれも“欠かせない”重大な役割を果たしておられる(それぞれ国事行為)。
この点、念の為に注目を呼び掛けておく。