高森明勅

2020年9月15日2 分

「旧宮家」を巡る菅答弁の“重み”

最終更新: 2021年3月21日

「旧宮家」を巡る菅答弁の“重み”

9月14日、自民党の新総裁は、事前の予想通り菅義偉内閣官房長官に決まった。

この瞬間、次の首相への就任も事実上、併せて決定したことになる。これで、今年の2月10日の同氏の国会答弁は、より“重み”のあるものになった。

同日、衆院予算委員会において山尾志桜里議員が質問に立たれた。皇位の安定継承を巡り、政府はこれまで、旧宮家系国民男性に果たして皇籍取得の意思があるのかどうか、当事者の意向を確認して来なかったという。

ならば、“今後”は当事者の意向確認を行うのか、どうか。そこを質問された。対象となる旧宮家系男性は皆さん、国民だ。だから「強制」は論外。本人の意向を確かめなければ何も始まらない。しかし、この時、菅官房長官は「今後もそのようなことは考えていない」旨、明確に答弁された。これは極めて重大な答弁だった。

それが虚偽でない限り、政府は“旧宮家案”を採用しない方針であることを明らかにしたに等しいからだ。この質問は、山尾議員と私との打ち合わせで、私から提案申し上げたもの。

でも私自身としては、余りハッキリとした答えは引き出せないのではないか、と考えていた。

「慎重、適切に判断したい」とか、「予断無く、丁寧に検討する」などという、内容空疎な答弁でお茶を濁されてしまう可能性が高い、と踏んでいた。政府としては、予(あらかじ)め自分達の手足を縛るようなことは避けたいはずだから。

従って、“駄目で元々”という気持ちの質問だった。ところが、全く曖昧さの無い、クリアな答弁だったので、正直に言って、こちらが少し驚いたくらいだ。菅氏が首相になれば、あの答弁はより重要な意味を持って来るだろう。

ちなみに、山尾議員が議員会館のエレベーターの中で偶然、菅長官と一緒になられた時、菅氏の方から、皇位の安定継承の話題を話し掛けて来られたとか。菅氏の頭の中では山尾議員=皇統問題という連想が働くようだ。

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