
衆参正副議長の呼び掛けにより、国会を構成する全政党·会派を集めた全体会議が再開された。
少しでもまともな合意に達することを願う。
その際、額賀福志郎·衆院議長らが「天皇陛下から秋篠宮殿下へ、更に悠仁親王殿下に至る
現在の皇位継承の順序を忽せにしない」という合意を得ようとしている点は、気がかりだ。
今の皇室典範は、一夫一婦制で少子化が進む中でも、明治以皇位継承資格を男系男子に限定する“縛り”をうっかりそのまま維持するという、ミスマッチの構造的欠陥を抱えている。
その欠陥ルールによって規定されている継承順序を固定化し、既定事実化してしまえば、安定的な皇位継承を目指す制度改正は行えない。
そもそも政府·与党が今回、本来の「安定的な皇位継承」という課題から人々の関心を逸らす為に目くらまし的に掲げている「皇族数の確保」という目的に照らしても、皇位継承順序の固定化は何のプラスにもならない。それは全く必要性がないどころか、逆に邪魔になるだけだ。
元々、今の皇位継承順序を「ゆるがせにしてはならない」というのは、内閣に設置された有識者会議が“宿題”から逃げ出す為に持ち出した、底の浅い口実に過ぎない。それを立法府の合意事項にしてどうするのか。
しかも、仮にそのような合意が成り立っても、法制度上、将来における皇位継承順序はその時点での皇室典範のルールによって規定される。皇室典範のルールがどのようなものになるかは、当然ながらもっぱらその時点での国会の意思に委ねられる。
現時点でどのような立法府の合意がなされようとも、それによって「皇位は(男性·女性、男系·女系を含む)世襲」という憲法の規定を逸脱しない範囲内で皇室典範の改正が将来に行われることを、予め制限することは出来ない。
皇位継承の順序はルールによって規定された結果に過ぎない。そのルールが改正される可能性が残り続ける以上、その順序を固定化することも原理的に不可能だ。額賀議長らがこの点の合意作りに腐心している姿は、失礼ながらいささか滑稽に見える。
追記
①2月8日、高森稽古照今塾。
②プレジデントオンラインで毎月連載している
「高森明勅の皇室ウォッチ」は、昨年7月掲載「皇室研究家が断言…『皇位継承の安定化を願うなら“愛子天皇”しかない』シンプルな理由」と同9月掲載「帝王学を受けずに皇位を継承するのか…悠仁さまの“成年のご感想”と愛子さまの成年のご発言の圧倒的な差」が昨年下半期社会ジャンルBEST5に選ばれ、共に2月10日に再掲載された(タイトルは編集部による。念の為)。
社会ジャンルは健康や美味しい食べ物など人々の関心を集めやすいテーマが並ぶ中で、皇室をテーマにした拙稿が上位5本のうち2本もランクインした事実は、人々のこのテーマへの関心の高まりを示しているだろう。そのことが嬉しい。
確か昨年上半期も拙稿が2本入っていたはずだ。メディア関係者もよく読んでくれているようで有難い。
③2月11日、「建国記念の日」。
東京国際フォーラムで「くにまもり演説大会」が開催された。私は審査員。
参加者は20代を中心にオンラインを含めて約1500人。
熱気にあふれた大会は成功だった。
【プレジデントオンライン】