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  • 執筆者の写真高森明勅

婚姻による皇籍取得ができなかった時代から可能な時代へ


婚姻による皇籍取得ができなかった時代から可能な時代へ


皇室における一夫一婦制と少子化という現実を前提とする限り、女性天皇や女性宮家を可能とする皇室典範の改正は不可欠だ。


その場合、当然ながらご婚姻相手の男性は、女性が皇族との婚姻によって皇族の身分を取得されるのと同じように、皇族になられる制度を用意する必要がある。


しかし、それに抵抗する人らがいる。


これまで「(皇族以外の身分から)皇族になった男子は1人もいない」(「SPA!」8月29日·9月5日号)と。だから、その“先例”を破ってはならないと言いたいのだろう。


しかし、前近代では、男性だけでなく女性についても、婚姻によって皇族になられた事例はない(この事実が意外に見落とされている)。


ところが、明治以来、女性が婚姻によって普通に皇族になられる事例が積み重ねられて来ている。とっくに上記の先例は破られていて、そのことを先の論者を含めて、誰も問題視することはなかった。


要は、わが国の歴史の中で、婚姻によって身分が変わらない時代もかつてあった、というということでしかない。そこが理解できないで、前近代にあたかも女性だけは今と同じように婚姻によって皇族になったかのように錯覚している向きがあった。しかし、事実に基づく限り、せいぜい「皇族“として扱われた”」(同8月8日号)という苦しい表現に逃げるしかなかった。


しかしこれは、婚姻によって皇族の身分になって“いなかった”ことを意味する。


最近の記事でも、「皇族“としての待遇”が与えられてきた」(前出·8月29日·9月5日号)と述べ、前近代において女性が婚姻によって新たに皇族になった事例を、遂に1つも挙げることができず、私がかねて指摘してきた事実を承認する他なくなった。


明治の皇室典範以来、婚姻によって身分が変更される時代へと転換した。

その際、当時の「男尊女卑」の風潮を背景として、婚姻後は“男性の身分と同一化”するルールを採用した。それが、今もそのまま踏襲されているのは奇妙だ。


身分の基準となる軸を明治以来の「男性か女性か」ではなく、「皇族か皇族でないか」に変更する必要がある。皇族との婚姻なら男女に関わりなくお相手は皇族となる、つまり“皇族の身分に同一化する”ルールを採用すべきだ。


これまで、反対論の主な根拠は前述の通り、「婚姻によって皇族でない男性が皇族になった前例は一度もない!」というものだった。


だが、既に女性について、婚姻による皇族への身分変更のルールが違和感なく受け入れられ、早々と定着した経緯を振り返ると(上皇后陛下や皇后陛下、紀子妃殿下、その他多くの実例がある)、それが反対の根拠になるとは考えられない。



[追記]


先日、Facebookの書き込みで未読の桜田真理絵氏「未婚の女帝と皇位継承―元正·孝謙天皇をめぐって」(『駿台史学』第156号)を教えて戴いた。早速、拝読し、学ぶところがあった。ご親切に感謝する。

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