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  • 執筆者の写真高森明勅

キリスト教の女性差別


 キリスト教の女性差別

キリスト教の女性差別


以前、主に田上太秀氏の研究成果を元に、仏教における「女性差別」の激しさについて取り上げた。ここでは、キリスト教の女性差別について、中村敏子氏の指摘を紹介する。


「西洋における女性差別の構造は、キリスト教の教えを基礎として作られました。西洋社会はキリスト教を基本的枠組みとして作られており、現在でも人々の生活の深いところにキリスト教の影響を見ることができます。女性差別もそのひとつだということができるでしょう」


「キリスト教の女性差別の教えの形成に最も大きな影響力を持ったのは、初期のキリスト教会を確立する中心となった『教父』のひとりアウグスティヌス(354年~430年)です」


「(旧約聖書)『創世記』解釈から、キリスト教における女性差別の教えが導き出されました。第一に、神は男性を創(つく)った後『男性を助ける者として』、男性の肋骨(ろっこつ)から女性を創ったと書かれていることから、創造の始めから女性は男性の支配下にいるべき者とされたという解釈が出てきます。


これは、『原罪(神が禁じた善悪を知る木の実を食べたこと―引用者)』を犯した後、神が男性による女性に対する支配を命令したことでさらに補強されます。


第二に、人間が楽園を追放されるもとになった神の命令に対する違反を主導したのは女性でした。…それゆえ女性は道徳的に劣る存在であって誘惑されやすいので、男性が支配下に置き、押さえつけなければならないと教えられるようになりました」


「ローマのカトリックから分かれたプロテスタントの教えでも、女性の捉え方は変わりません。プロテスタントという宗派が成立するきっかけとしての宗教改革(1517年)を担ったルターは、上に見たような『聖書』の記述に加えて、アリストテレスのような肉体的差異にもとづく女性差別の根拠を合わせて、女性に関する教えを説きました」


「イギリスの宗教改革とその中での女性の扱いを分析したパトリア・クロフォードは、宗教改革の成果について、宗教改革はカトリック教会の持つ権力を個々の男性が握ることを可能にしたけれど、それは家族において男性の女性に対する抑圧を増すという状況を生み出したと述べています」


「キリスト教世界では、『聖書』にもとづく神の教えとして、女性の存在…を否定的に捉え、男性支配を肯定するような土壌があり、それが近代社会まで影響を与えてきたといえるのです」


どうやら、キリスト教も仏教に劣らず、女性差別の程度は甚(はなは)だしかったらしい。

神道(しんとう=日本の民族宗教)における、元々の「女性観」とはかなり異なる。何しろ、“最高神”でかつ“皇室の始祖”と仰がれているのが、「女性神(天照大神)」なのだから。

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