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  • 執筆者の写真高森明勅

日本と欧米、衛生観念の違い

更新日:2021年5月18日


レバノンで生まれて、千葉県で育ち、東京大学を卒業後、フランスのパリ第3大学日仏翻訳科を修了、パリで4年半、ロンドンで8年半過ごした後、ニューヨークに移住された英仏翻訳者のオティエ由美子さん。


日本とイギリス・フランス・アメリカの“暮らしやすさ”を、①文化・暮らし、②メンタリティ、③教育、④社会という4つの視点から比較しておられる(平成26年、リンダブックス)。


その中の衛生観念を巡る指摘から。


「実際のところは西欧でも、家の中で靴を脱ぐという人は結構います。

…アメリカでは家の中でも靴を履いたままという人が多いようなのですが、フランスとイギリスでは靴を脱いで上がる方が多数派ではないかと思える…一つだけ決定的に(日本と)異なる点があります。


それは、普段は土足禁止の家であっても、ちょっとしたホームパーティーを開くときなどは、招待客たちに、『靴のままで上がって下さい』と声をかけること。


…『人前で靴を脱ぐなんてはしたない』という感覚がまだ残っているらしい。それにおしゃれは靴を含むトータルコーディネートで決まるものなので、招待客に靴を脱ぐように頼むのは、二重に失礼に当たるというわけです。


…イギリスでもフランスでも、カーペットや大きなラグを敷いてある家は多いのですが、そうした家では、お客が帰った後にいちいち面倒なカーペットシャンプーなどはしていられません。


だから彼らは、客人が土足で歩いたカーペットの上を素足で歩いたり、子どもたちにいたってはゴロゴロ寝ころがったりしている。そうした家を訪問するとき、気を使って靴を脱いで上がったら靴下の裏が真っ黒になっていたというのは、よくある現象です」


「少なくとも私が観察した限り、アメリカ、イギリス、フランス人は、リュックやカバンを道端に置いたり、自分自身が地べたに座りこんだりすることにあまり抵抗がないようです。

日本人の中にも抵抗を感じない人はいるでしょうが、そういった人々は明らかに例外に属します。


公園のベンチや石段に座るとき、下にハンカチを敷いたりするのは日本人だけ。アメリカ、イギリス、フランス人は汚れをそれほど気にせず、極端な例だと公衆トイレの床に躊躇なくかばんを置く人までいます」


「イギリス人の一般的な皿洗い法は、シンクにお湯をためて洗剤を入れ、その中に食器を沈めて汚れをスポンジで拭い取ったら、泡をピュッピュと切って(ゆすがずに)水切りかごに置く、というやり方です。


…アメリカ人やフランス人は…一つのシンクに湯を張り、洗剤を入れて洗った後、もう一つのシンクに張ったゆすぎ用のお湯で皿をジャブジャブ泳がせてから(水で洗い流さずに)水切りかごにあげるのだそうです。シンクが一つしたかない場合は、洗剤の中から皿をあげた後、ちょろちょろと細く出した蛇口の水をくぐらせます。


しかしものの数秒くぐらせたらすすぎ終了なので、食器の縁や裏にかなりの泡が残ってしまう。どちらにしろ、日本人の求めるすすぎ基準とは程遠い結果です」


「米英仏では、食器のみならず人間も、泡風呂に入った後は水を流さず、そのままタオルで拭いてしまうのが一般的です。…赤ちゃんの入浴さえ、浴槽に水を溜め、ベビー用せっけんを入れてジャブジャブ洗ったら、泡がついたままの体をタオルで拭いて終わり、というやり方が珍しくありません」


確かに、日本と欧米の衛生観念には、いささか違いがあるようだ。

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