2月11日、「建国記念の日」。有楽町の「よみうりホール」で第12回「くにまもり演説大会」が開催された。1100人収容の会場が若者達でいっぱい。登壇した8名の弁士は皆、20歳代だ。でも、1290名の応募者の中から第3次審査まで、競争率100倍以上の難関を突破して来た“強者(つわもの)”達だ。強者と言っても、例年は圧倒的に女性が多い。しかも応募者の内訳は、7対3の割合で男性の方がずっと多いにも拘らず、そんな状況。フラットな条件で競うと、いかにこの方面の女性の能力が高いか、を窺わせる。しかし、今年は珍しく男性陣が健闘して、半数を占めた(それでも辛うじて半数…)。
私はもう何年も、審査員の1人として参加している。皆さんレベルが高くて評価に悩む。
今年の優勝はフィリピン国籍の女性。「日本における外国人労働者受け入れを議論する」というテーマだった。初めて本選に残った外国籍の弁士が、いきなり優勝した。話の中身については、審査員の中でも賛否が分かれたり、欠点を指摘したりする声もあった。恐らく内容の完成度の高さでは、優勝者を上回る弁士が他にいただろう。しかし、それを凌駕する演説それ自体の迫力、説得力、聴衆を巻き込む力が、評価された。
準優勝は新潟の酒屋の跡継ぎの男性。清酒をテーマに、自身がフランスでの清酒コンテストに参加した経験もまじえて、熱く語った。
3位も女性。自分のやや珍しい名字を入り口に、誰もが持つ名字から、自分と日本の歴史や自然との繋がりを実感できると訴えた。名字という身近ながら見逃されがちなテーマに光を当てた新鮮さと、素材の普遍性が評価された。
私は当初、これから教師になることが決まっている大学4年生の女性を、最高点にしていた。「地域を愛する心を育てる」との演題。東日本大震災の傷痕が残る陸前高田市で、ボランティアとして多くの中高生と触れ合った体験から、郷里の小学校の教壇に立つ決意を固めた動機を語り、広くどの地域でも、郷土への愛着と誇りと希望が欠かせないことを呼び掛けた。悲壮ぶって大きな声を出す訳ではない。しかし、その言葉が胸の奥に届く。彼女の演説だけは、不覚にも、何故か涙が滲んだ。
参加している若者達も実に立派だ。最前列の審査員席にいる私にも、背後に共感の輪が広がって行くのが感じ取れる。頼もしい。日本も嘆かわしいことばかりではない。そう思わせてくれる1日だった。