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  • 執筆者の写真高森明勅

日本書紀に特筆された「忠犬」


日本書紀に特筆された「忠犬」

日本書紀に特筆された「忠犬」


改めて言うまでもなく、日本書紀は我が国で最初の「正史」だ。正史とは、国家の事業として編纂(へんさん)され、最も正統と認められた歴史書。日本書紀に取り上げられた人物は、それによって将来、永遠に歴史に名前を留めることになる。そうした中で、1匹の犬が日本書紀に登場する。


6世紀に物部守屋(もののべのもりや)が滅ぼされた時(587年)、守屋の家来だった捕鳥部万(ととりべのよろず)が目覚ましい奮戦を見せて、壮烈な最期を遂げた。朝廷は反逆者として、その首を串に刺して晒(さら)しものにしようとした。その場面で、万が飼っていた白い犬が現れ、人々を近づかせないように、死体の周りを回って吠えた。そうして頭を咥(くわ)えて古い墓に収め、そのまま傍らにいつまでも伏して飢え死にした。


朝廷はその犬の忠誠ぶりに感動し、当初の方針を変更した。

新しく墓を2つ並べて造らせ、そこに万と犬とを丁重に葬らせたという。日本書紀は、万の奮戦と共に、その忠犬についても特筆大書した。これによって万の犬は、約1500年もの歳月を越えて、現代にまでその忠誠が伝わることになった。 書紀編者の志にも心を動かされるものがある。

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