• 高森明勅

「すべからく」の誤用



「すべからく」の誤用

「すべからく」という言葉の間違った使い方が目に付く。一般には余り使われない語なので、インテリぶった人が少し気取ったつもりで間違った使い方をして、逆に恥をかいているケースが多いようだ。“全て”という意味で使われている場合をしばしば見掛ける。活字になった文章の中にも見られる。編集者は仕事をしているのだろうか。念の為に、最近の辞書からこの語の項目を引用しておく。


「すべから-く[須く]〔副〕当然なすべきこととして。ぜひとも。『学生は―勉学に励むべきだ』◎漢文訓読から出た語。多くは下に『べし』や『べきだ』を伴う。《注意》『落武者たちはすべからく討ち死にした』など、『すべて』の意に解するのは誤り」(『明鏡国語辞典〔第2版〕』)


「すべからく[須く]〔副〕当然。なすべきこととして。『学生は―勉強すべきだ』◎漢文訓読から出た言い方。すべくあることの意。本来は下を『べし』で結ぶ。近ごろは語義を誤り、『すべて』と混同する用法が多い。『そもそも』に紛れる用法もある。以前の文章での『須(ら)く』には『しばらく』と読んで仮にの意の場合もあることに、注意」(『岩波国語辞典〔第8版〕』)


後者を見ると、間違って「そもそも」の意味で使う用法も出て来ているらしい。「すべからく」=「ぜひとも」と頭に入れておけば間違わないだろう。それにしても、2つの辞書がどちらも、例文として「学生はぜひとも勉学(勉強)すべし」という意味の文章を掲げているのは偶然か。こんな例文ばかりだと、学生がウンザリして辞書離れしないか心配だ。前者の「落武者」の例文も少しセンスを疑う。いずれにせよ、言葉の間違った使い方には私も気を付けよう。

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