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執筆者の写真高森明勅

ご譲位に伴う儀礼

政府が今上陛下のご譲位に伴う儀礼の在り方について 方針を明らかにした(政府の用語は「退位」)。 私が予想していた線から大きくは外れていない。 特に私が気していたのは、神聖な神器

(じんぎ、皇室経済法では「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」)

である「剣璽(けんじ=宝剣と神璽)」の扱い方。


一時、来年4月30日の退位の儀式で、そのまま剣璽を宮殿に “置き去り”にする(陛下が神器を手放される)という仰天のプランが、 政府内部で検討されていた。


これは畏れ多くも、まだ在位されている天皇陛下から、

政府が神器を“取り上げる”に等しい。


「皇位は神器と共にあり」という古来の鉄則を、敢えて踏みにじる暴挙。

到底許されない。

さすがにそんな馬鹿げたプランは、当然ながら消え去った。 しかし、たとえ一瞬でも、そうしたプランが浮上していた事実と、 政府関係者の底無しの無知さ加減に、殆ど戦慄を覚えた。 各メディアの報道の中で、『産経新聞』(3月21日付)は 相変わらず、“本末転倒”の説明を押し通している。 剣璽等承継の儀を「天皇の印『御璽(ぎょじ)』、国の印章 『国璽(こくじ)』などを継承する」と(印と印章の不統一もそのまま)。


孤高(!?)の無知ぶり。

誰か教えてやってくれ、と思う。 読者が気の毒だ。

この新聞に校閲部は無いのか。


『日本経済新聞』はわざわざ「剣璽等承継の儀」について用語解説している。


「皇位継承の中心となる儀式。 歴代天皇に伝わる三種の神器のうち剣と璽(じ=まがたま)、 公務で使う天皇の印の御璽、国の印の国璽が新天皇に引き継がれる。 …残る神器の鏡は伊勢神宮にある」と。

親切な説明だ。 でも残念ながら「残る神器の鏡は…」の部分は舌足らず。


「神器の鏡」は宮中にもあるからだ。


念の為に整理しておくと、(少しややこしいが)

三種の神器は5つある。


先ず(1)鏡が伊勢神宮(三重県)の

ご神体(しんたい)の神鏡(しんきょう=ご本体)と

宮中三殿(皇居内)の賢所(かしこどころ)に祀られる

宝鏡(ほうきょう=ご分身)。


次に(2)剣が熱田神宮(愛知県)に祀られる神剣(しんけん=ご本体)

と御所(皇居内)の「剣璽の間」に奉安されている宝剣(ほうけん=ご分身)。


(3)玉は同じく「剣璽の間」に奉安されている神璽(しんじ=ご本体のみ)。


以上だ。


今後も、政府の取り組みとメディアの報道の仕方に、目を光らせよう。

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