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  • 執筆者の写真高森明勅

本居宣長『直毘霊』「神道」論のキーワードは「天照大神」


本居宣長『直毘霊』「神道」論のキーワードは「天照大神」

近世国学の大成者、本居宣長。

その代表作は改めて言うまでもなく、35年もの歳月をかけて完成させた文字通りのライフワーク、『古事記伝』(全44巻)に他ならない。


その「一之巻」末尾に「直毘霊(なおびのみたま)」と題する神道論が収められている。この部分だけでも独立の書物として刊行されている。


私の手元には、『本居宣長全集』(筑摩書房版)本の他に、西田長男氏『直毘霊』(昭和19年)、中村幸弘氏・西岡和彦氏編著『「直毘霊」を読む』(平成13年)がある。


その中から、最も核心部分(自注を除き本文のみ)を引用すれば次の通り。


「そも、此(こ)の道は、いかなる道ぞと尋ぬるに、天地(あめつち)のおのづから(自ずから)なる道にもあらず。人の作れる道にもあらず。此の道はしも、可畏(かしこ)きや高御産巣日(たかみむすひ〔但し宣長はムスビと訓んだ〕)の神の御霊(みたま)によりて、神祖(かむろき)伊邪那岐(いざなき)の大神、伊邪那美(いざなみ)の大神の始め給(たま)ひて、天照大御神の受け給ひ、保ち給ひ、伝へ給ふ道なり。故(か)れ、是(ここ)を以(も)て神の道とは申すぞかし」


今は詳しく注釈を加える場面ではないので省略するが、「神の道」の根源を「高御産巣日の神の御霊」に見据えているのは、古代以来、正史として重視されて来た『日本書紀』よりも『古事記』を重んじた、宣長ならではの着眼だ(北畠親房の『神皇正統記』では、『日本書紀』正文の冒頭に登場する「国常立尊」が「天祖」として国の基を開いたとした)。


また天照大神を「天照大“御”神」と表記しているのも(訓み方はどちらも同じで、アマテラスオオミカミ)、『日本書紀』ではなく『古事記』に従っている(北畠親房の場合は「天照太神」と表記)。


それらはともかく、上記の文脈において「天照大御神」こそが神道を「(先代から)受け→(自ら)保ち→(後代へ)伝えた」として、最も重視されていたことは明らかだ。


先にブログで取り上げた見た北畠親房は、「天照太神」を皇位・皇統の根源(「皇祖」)としたが、本居宣長は神道の継承にとって最も重大な神として、「天照大御神」を位置付けていた。


近頃、天照大神が“女性神”であることから、皇位の安定継承を巡る議論との絡みで、奇妙な底の浅い政治的思惑によって、ことさら軽視したり、相対化したりしようとする「保守」系論者がいるようなので、念の為に。


追記

〇4月18日に発売の『週刊女性』(5月2日号)にコメントが掲載された。

しかし、誌面に載ったのは私が質問に答えたごく一部だけ。主旨が伝わりにくい断片的発言になっているのは残念だ。


〇4月22日、天皇陛下の清新な青春の記録『テムズとともに 英国の二年間』が待望の新装復刊。同書についてはプレジデントオンラインの「高森明勅の皇室ウォッチ」で取り上げる。


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