top of page
  • 執筆者の写真高森明勅

元内閣法制局長官が旧宮家プラン=憲法違反を認定した重み


元内閣法制局長官が旧宮家プラン=憲法違反を認定した重み

男系限定論者らが唱え続けて来た旧宮家プラン。

既に代表的な憲法学者が、憲法が禁じる「門地(血筋・家柄)による差別」(第14条)に該当する疑いを、指摘しておられる。


◎東京大学教授・宍戸常寿氏

「法律(皇室典範)等で、養子たりうる資格を皇統に属する男系男子に限定するならば…一般国民の中での門地による差別に該当する恐れがある。…内親王・女王との婚姻を通じた皇族との身分関係によらず、一般国民である男系の男子を皇族とする制度を設ける制度ことは…門地による差別として憲法上の疑義がある」(令和4年5月10日、有識者会議ヒアリング)


◎京都大学名誉教授・大石眞氏

「一般国民の間における平等原則に対して『門地』などに基づく例外を設け、『皇族』という継続的な特例的地位を認めようとするもの…憲法上の疑念があると言わざるをえない」(同上)


東大憲法学と京大憲法学をそれぞれ代表される両氏の学者としての“重み”を考えると、この問題については既に決着を見たと判断できそうだ。


そもそも両氏の指摘は、憲法学界における長年の通説(=門地による差別の例外は天皇・皇族だけ)を当該テーマに適用したに過ぎない。


よって、これへの反論は従来の通説を覆す磐石な根拠を示す必要がある。だが私の知る限り、これまで説得力のある反論は遂に出されなかった。


例えば、百地章氏が以下のような反論を示しておられるのなど、残念ながらにわかに支持し難い。


①旧宮家系国民男性は皇統に属する男系男子なので門地差別禁止の例外。

②男系男子による皇位継承を維持する為の特別扱いは不当な差別でなく合理的区別。どちらも無理な言い分だ。


①→例外は皇統譜に登録される天皇・上皇・皇族に限られる(憲法第1章〔取り分け第2条〕という“例外規定”が優先的に適用される為)。旧宮家は戸籍に登録された国民なので、例外扱いは許されない。


②→門地差別禁止という憲法の要請に対して、男系男子維持という憲法の附属法に過ぎない皇室典範の要請を根拠に、特別扱いを合理化することは出来ない。特別扱いの根拠となるべき憲法の「世襲」要請には、男子・女子、男系・女系を含むからだ(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』参照)。


上記に加えて、更に先頃、元内閣法制局長官が“旧宮家プランが門地差別に該当する”という見解に、賛意を示されている。改めて説明するまでもなく、同局は内閣の憲法解釈などを担う国家機関で、憲法解釈については最高裁判所でさえ一目置かざるを得ないほどの、専門家集団だ。


◎元内閣法制局長官・阪田雅裕氏

「門地(による差別)にあたるといえばその通りだろうと思います。…(宍戸氏が)おっしゃるように、憲法上、疑問があるという」(「倉持麟太郎のこのクソ素晴らしき世界」8bitNews、令和5年3月8日配信)


これは重大な発言だ。

元内閣法制局長官の発言は、学者の場合とは又違った重みがある。少なくとも、内閣がそれを頭から無視して制度改正に手を着けることは、困難だろう。なお阪田氏には『政府の憲法解釈』(平成25年、有斐閣)という編著もある。


以上によって、旧宮家プランが憲法違反であることはほぼ確定し、現実的な選択肢としては除外されざるを得ないだろう。もし、憲法の「世襲」要請に応える為の皇室典範改正(=女性天皇・女系天皇の容認)に予め手を着けないまま、門地差別禁止の例外を国民(!)にまで安易に拡大すれば、畏れ多いが皇室は差別の元凶と見られかねない。


特定の国民を恣意的に、血筋・家柄を根拠として特別扱いすることが許されるならば、同じ根拠による自由や権利の制限にも、連鎖する虞(おそ)れがある。

bottom of page