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  • 執筆者の写真高森明勅

旧宮家養子縁組=門地による差別を有識者会議事務局が問題視

更新日:2022年11月28日



旧宮家養子縁組=門地による差別を有識者会議事務局が問題視

政府が現在、国会に検討を委ねている皇族数の確保策を巡る有識者会議報告書について、

実は同会議事務局が作成した「事務局における制度的、歴史的観点等からの調査・研究」

というレポート(令和3年11月30日提出)の中で、“養子縁組プラン”が抱える問題点を率直に指摘していた、という事実がある。


今回の有識者会議報告書は、事務局がそこで自ら指摘した問題点をクリアするロジックを、遂に構築できていない。だから、「予め結論ありき」で“出来レース”的に提出した稚拙な作文、という印象を拭えない。以下、同レポートから関連の部分を掻い摘んで紹介しよう。


レポートでは「養子となり得る者と他の国民の間の平等感への配慮」が必要との観点から、具体的な問題点を列挙する(32~33ページ)。これは明らかに憲法が禁じた「門地による差別」(第14条第1項)に配慮した内容になっている。


しかし、「憲法違反」という“客観的”な判定基準を設けると、一発アウト(!)であることが明白になるので、ゴマカシの余地を残した「平等感」という“主観的”な問題設定にすり替えている。これは事務局作成資料としてやむを得ない限界だろう(以下、問題点を整理して理解しやすいように、記述の配列の前後を一部入れ換えた)。


「養子縁組を恒久的に制度化し、例えば旧11宮家に限って養子縁組となることができると規定した場合には、旧11宮家の男系男子が他の国民と異なる立場にあるという見方を恒久化することにつながりかねない。これは、国民の間における平等感の観点から問題が大きいのではないか」

(←「門地による差別」に当たる!と全面否定しているのにかなり近い言い回し)


「(上記の問題を緩和する為に―引用者)一定の期間を限って制度化したとしても、法律の明文で規定する以上は、養子となり得る者として規定される国民と他の国民の間の平等感の問題は

あるのではないか」(←期間限定という緩和策も問題解決にはならない!との指摘)


「(恒久制度も期間限定策も避けて―引用者)個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能とする立法を行う場合、養子縁組の成立に向けた様々な準備は、皇室典範により養子縁組が禁止されている状況の中で行わなければならないことになる」(←問題回避を目指す個別対処策も現行法の“禁止”規定との関係で問題あり!という批判)


「権力分立や、国家に対する国民の自由・平等の確保という観点から、法律は一般性(不特定多数の人に対して、不特定多数の事案に適用されること)を有していなければならないとする考え方もあり、(平等感に配慮して予め法律を制定せず、個別に養子縁組の合意が得られた場合ごとに、それを合法化する“後追い”的に立法措置を講じるという―引用者)このような個別処分的立法は難しいとの考え方もあるのではないか」(←個別対処策への批判に追い討ち!)


有識者会議報告書には、残念ながらこれらの(事務局という立場なのでさすがに控え目な表現に抑えているが)問題の本質に迫る指摘に対して、説得力のある釈明や回答は一切書き込まれていない。


事務局によって事前に(!)、最終報告書に対する事実上の“ダメ出し”が公表された、珍しいケースかも知れない(レポートでの“先回り”的なダメ出しは、担当官僚としてのプライドが書かせたのだろうか)。


但し、有識者会議のホームページに公開されていても、政治家や記者を含めてその中身は余り読まれていないのではあるまいか。


少なくともそのように高を括っているから、あのような劣悪な報告書を平然と政府に提出し、政府もそのまま国会に回すことができたのだろう。


次の機会に改めて、憲法における第2条「皇位の世襲」規定と第14条「門地による差別禁止」規定との関係について、私なりの整理の仕方を述べてみたい。



追記

11月29日発売の「女性自身」にコメントが掲載される。

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