拙著『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)の広告が、日経新聞(10月2日付)と朝日新聞(同3日付)に比較的大きく掲載された。
メインとなるキャッチコピーは「天皇が切望し、国民が圧倒的に(87%)支持する『女性天皇』を、阻むものは何か?」。本の帯に入っているのと同じ文言だ。版元が用意してくれたコピーだが、なかなかインパクトがある。
《「天皇が切望」の根拠は?》
ところが新聞サイドの広告審査のプロセスで、「天皇が切望し」とある部分の根拠は何かを尋ねて来たらしい。当然の慎重さだろう。
ちなみに「圧倒的に(87%)」の数字の根拠は、本書でも紹介した共同通信の今年4月の世論調査であることが、広告自体の中に注記されている。そこで、以下の諸点を版元に伝えた。
①コピーでは「天皇陛下」ではなく「天皇」とあるので、必ずしも今上陛下に限定されない。平成の天皇、つまり上皇陛下も含み得る。
②上皇陛下は、本書にも引用されている平成28年8月8日のビデオメッセージの一節で、皇位の安定継承を切実に願っておられるお気持ちを、丁寧に述べておられた。その皇位の安定継承は、女性・女系天皇を認めなくては可能にならない。
《奥野修司氏の取材》
③ノンフィクション作家の奥野修司氏の取材により、上皇陛下はご自身が天皇であられた平成当時、以下のように述べておられたらしいことが明らかにされている(『天皇の憂鬱』新潮新書)。
「ゆくゆくは愛子(内親王)に天皇になってほしい。だけど、自分も長く元気ではいられないだろうから、早く議論を進めてほしい」と。
これは「ある人物」という匿名の情報源によるものだ。しかし、ご発言の内容から匿名になるのはやむを得ず、奥野氏のこれまでの堅実な仕事ぶりから、十分に信頼に足るはずだ。
《工藤美代子氏の評価》
④奥野氏が紹介したご発言の信憑性については、同じくノンフィクション作家の工藤美代子氏の言及も見落とせない。かねて三笠宮家と長年にわたる信頼関係を築き上げ、ご本人は「可能なら連綿として続いた男系男子の天皇継承も残して欲しい」と考える同氏が、次のように書いておられる。
「そう語った人物の名前は明記していないものの、奥野氏自身の責任において、あえてこの文章を書いたのがわかる。そうなると上皇、上皇后のご意思は、愛子天皇の誕生にあることが信憑性をもって読者に伝わってくる」(『女性皇族の結婚とは何か』毎日新聞出版)と。
⑤平成のしばらくの期間、御所において、上皇陛下(当時は天皇)・天皇陛下(当時は皇太子)・秋篠宮殿下がお集まりになり、宮内庁長官も交えて、定期的な会合を重ねておられた。
上皇后陛下(当時は皇后)が加わっておられないことから、皇位の継承などが主なテーマだったと拝察できる。
それによって、お3方の間で合意が図られているはずなので、今上陛下が上皇陛下とかけ離れたお考えとは想像しにくい。
ほどなく、広告が審査にパスしたとの報告が入った。せっかく練り上げてくれたコピーが、そのまま掲載できて良かった。
追記
10月1日、宮内庁による眞子内親王殿下のご結婚発表を巡り、共同通信から予め依頼されていた私の原稿が全国の報道機関に配信された。早速、郷里・倉敷に住んでいる末弟から「山陽新聞」(10月3日付)に掲載されているとの連絡が届いた。
更に7日、共同通信の担当者からも、東奥日報・秋田魁新聞・新潟日報・神戸新聞・京都新聞
・高知新聞・佐賀新聞・西日本新聞・長崎日報・南日本新聞など、多くの新聞に掲載されたと伝えてくれた。
又、別にロイター通信から、9月30日に取材を受けていた私のコメント(英訳)が翌日、世界各国に配信された。そこでは私の「人権侵害」という表現がそのまま報じられている。