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  • 執筆者の写真高森明勅

「全ては幻想」論者、岸田秀氏の最も“冷淡な”皇室「必要」論


「全ては幻想」論者、岸田秀氏の最も“冷淡な”皇室「必要」論

「全ては幻想」論者、岸田秀氏の最も“冷淡な”皇室「必要」論


心理学者でフロイディアンの岸田秀氏。


「人間は本能が壊れた動物である」「壊れた本能を補う為には幻想が不可欠」「自我も世界も全て幻想である」という“唯幻論”を唱えて、大きなインパクトを与えた。代表作は、ベストセラーになった『ものぐさ精神分析』シリーズ。

その岸田氏が、天皇・皇室について以下のように語っている。


「平和な時代には、国民は皇室に無関心になる。さほど必要のない、目立たない存在になる。しかし、いったん日本に危機が訪れるとふたたび浮かび上がってくる。天皇制をなくしてしまえば、いざ危機というときに困ることになる。日本という国をまとめるのに非常に都合のいい制度であり、天皇制が続いていくことには大きなメリットがあると思う」


「また、われわれ日本人は何の疑問もなく、われわれのことを、日本という国家に属している日本人であるという意識をもっているが、その国家意識を成り立たせているのは、日本列島と呼ばれる島々に大勢の人間が住んでいるという客観的事実ではなく、この国がはるか昔から日本として存在し、はるか未来まで続くという主観的共同幻想である。


その幻想の象徴として日本には天皇制がある。日本という国には万世一系の天皇が存在するという幻想が、日本人のアイデンティティに安定感をもたらしているのである。これを馬鹿げた幻想だというのであれば、イエス・キリストもアラーも馬鹿げた幻想であり、そもそも宗教とか民族とか国家とかはいずれも馬鹿げた幻想にもとづいているのである」


「したがって、今後も日本にとって皇室は必要不可欠な存在だと思うけれども、わたしは天皇制絶対論者ではないので、天皇制を廃止するのなら廃止してもいいと思うが、そのときには、日本人のアイデンティティを支える別の幻想が必要であり、今のところ、天皇制に代わる別の適当な幻想は見当たらない。別の幻想を見つけないで、天皇制廃止を唱えるのは無責任である。国家は幻想に支えられているのだから、国家を支えている幻想を軽く見てはならない。日本が消滅してもいいというのなら、話は別であるが」(『絞り出し ものぐさ精神分析』)


岸田氏らしい議論だろう。「国家は幻想に支えられているのだから、国家を支えている幻想を軽く見てはならない」という指摘は重要だ。

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