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天皇陛下は毎年、孝明天皇のご命日に祭祀を続けられている



天皇陛下は毎年、孝明天皇のご命日に祭祀を続けられている


私が学生時代に、孝明天皇を刺し殺す場面を描いた映画に抗議して、該当場面を削除させた話。少しだけ補足しておこう。


孝明天皇は、当時の天皇陛下(昭和天皇)の“ひいおじい様”に当たるので、今なら大正天皇の位置におられた。


現在、大正天皇が刺し殺される映画が全国の映画館で堂々と上映されるということは、少し想像しにくいのではあるまいか。同作品の監督に直接、抗議した時、監督は「明治天皇までなら皇室の祖先として配慮するが、孝明天皇はもう歴史上の人物なので、そこまでの配慮は

必要ない」との考え方を示した。


これに私は、およそ以下のように反論した。


「それは大変な心得違いです。天皇陛下(昭和天皇)におかれては、毎年、孝明天皇のご命日(崩御〔ほうぎょ〕相当日)に当たる1月30日、皇居・宮中三殿の皇霊殿で、恭しく孝明天皇例祭を奉仕しておられます。孝明天皇どころか、もう1代前の仁孝(にんこう)天皇のご命日(2月21日)にも例祭が、現在も執り行われているんです。そうやって毎年、天皇陛下ご自身がお祭りを続けておられる方であるという認識がきちんとあれば、あのような設定は出来なかったはずでしょう」と。


この指摘に、監督はさすがに言葉に詰まった。この事実があったので、結局、制作サイドの謝罪と該当場面の削除に迄、繋がったと思う。ちなみに、この映画会社が上映中の作品から問題箇所をカットする事態に追い込まれたことは、業界内で広く知れ渡ったようだ。

それが、その後、天皇・皇室に関わる作品を制作する際、一定の慎重さを求める効果を持ったと教えてくれた人がいた。


なお、皇室祭祀では毎年、初代の神武天皇と亡くなられた4代前迄の天皇を、丁重に祭られている(神武天皇と昭和天皇は大祭、他は小祭)。従って、天皇陛下は現在も、孝明天皇を祭り続けておられる。ひょっとしたら、見落とされている事実かも知れないので、念の為に付言しておく。

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