公平を期して、この度の退位特例法の附帯決議に対応する為の有識者会議の良い点に触れておこう。それは、専門家へのヒアリングを行う聴取項目が、網羅的でバランスの取れた内容になっていること。
女系天皇を取り上げると、一部から強硬な反対論が出て来そうだから止めようとか、旧宮家案は常識的に考えて無理筋だから、予め除外しよう、といった姿勢ではない。具体的には以下の通り。
問1、天皇の役割やご活動について。
問2、皇族の役割やご活動について。
問3、皇族数の減少について。
問4、皇位継承資格を「男系男子」に限定し、女性皇族はご婚姻と共に皇籍を離れられる現行制度の意義について。
問5、内親王・女王に皇位継承資格を認めること、その場合の継承順位について。
問6、皇位継承資格を女系に拡大すること、その場合の継承順位について。
問7、内親王・女王がご婚姻後も皇籍に留まられること、その場合、配偶者やお子様を皇族にすることについて。
問8、ご婚姻により皇籍を離れられた元女性皇族が皇室のご活動を支援することについて。
問9、皇族ではない皇統に属する男系の男子が①養子縁組や②そのままで新しく皇籍取得を可能にすること、その場合の継承順位について。
問10、皇位の安定継承、皇族数の減少への対策について、その他にどのようなものが考えられるか。
附帯決議に真正面から応える為に、検討が必要と思われる事項は、ほぼ漏れ無くカバーしていると言ってよいだろう。
又、設問の配列自体も、極めて真っ当な並べ方になっている。慎重に現行制度の「意義」を見極めた上で、これまで提案されている対策案を、女性天皇→女系天皇→女性宮家→“皇女”プラン→国民の中の皇統に属する男系の男子に皇籍の取得を認める(いわゆる旧宮家案のままではない!?)、という順序で並べている。ごく常識的で、共感が持てる。
問9については、熟慮の上で、従来、一部で唱えられていた「旧宮家案」を、制度として整合性が取れる形に手直しした可能性がある。小泉内閣の時の有識者会議報告書の場合は、
旧宮家案を斥ける趣旨だった。なので「昭和22年に皇籍を離れたいわゆる旧皇族やその男系男子子孫」という限定的な表現を用いた。
しかし、今回は新しい制度を作るかも知れない、という文脈。その際、一般的に「(皇族ではない)皇統に属する男系の男子」を対象とする制度はあり得ても、その中から「昭和22年に…」という人々だけを(政治的な経緯を理由として)“例外的に”
取り出して、皇籍取得を可能にするのは、法的整合性が取れない、と判断されたのだろうか。その結果、国民の中から“幅広く”皇籍取得を可能にする制度設計になり、皇室と国民の区別を曖昧にして、皇室の尊厳、「聖域」性を損なう危険性が更に高まったように見える。
旧宮家案の制度的な実現可能性を真面目に追求して、皮肉なことに問題点が逆に浮き彫りになった格好だ。
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