宮内庁は皇室関連の記事で余りにも事実と異なる報道がなされた場合、ごくたまに正確な事実関係を指摘することがある。今回、久しぶりに「週刊新潮」(12月24日号)の記事に対して、記事の内容を強く否定し、「誠に遺憾」とした(12月18日)。
以下の通り。
「(同誌は)『小室圭・佳代さんに美智子さまからの最後通牒』と題する記事を掲載し、12月17日の朝刊に上皇后さまのお写真と共に大きな字で『宮内庁長官を動かした上皇后』との広告を載せています。
この記事は、宮内庁長官の12月10日の記者会見における秋篠宮眞子内親王殿下のご結婚に関する発言について、『もっぱら上皇后さまの強いご懸念が影響しています』とし、また、『上皇后さまのご意向を受け、宮内庁トップが代理人を皇居内に呼び出し、最後通牒を突きつけた』と報じています。
先般、長官は上皇上皇后両陛下に本年度補正予算のご報告に上がっていますが、その折、上皇后さまは報告をお聴きになるだけで、ご発言は皇室の皆様のご健康についてご無事を問われることだけでした。眞子内親王殿下のお話は全く出ておりません。
今回の記者会見での長官発言は、記者質問に応じて、長官の考えを述べたものであり、また、小室さんの代理人と会ったのも、長官自身の判断によるもので、事前に上皇陛下や上皇后さまの号指示を受けたとか、お諮りをしたとか、あるいはご意向を汲んだといった事実は
全くありません。
眞子内親王殿下めぐる週刊誌報道については、既に宮内庁ホームページで二度にわたり、上皇上皇后両陛下が首尾一貫して一切の発言を慎まれていること、また、上皇后さまの名の下に様々な事実に反する報道がなされていることに上皇上皇后両陛下も深く傷つかれ、お心を痛めておられることを説明してきました。
86歳というご年齢でご自分も病いを持たれながら、上皇陛下のお世話を唯一の務めとして過ごしておられる上皇后さまに対し、このようなことが引き続き行われていることは誠に遺憾であります」
心ない週刊誌が、上皇陛下がご譲位になった今もなお、上皇后陛下について虚偽の報道を続け、両陛下のお心を深く傷付けている事実に、強い憤りを感じる。
又、国民として両陛下に対し、慚愧の念に堪えない。以前、上皇・上皇后両陛下のご長女、紀宮(のりのみや、清子〔さやこ〕内親王)殿下(現在は黒田清子様)が、上皇后陛下(当時は皇后)に対し、「週刊文春」(当時の編集長は花田紀凱氏)をはじめとするメディアが事実無根のバッシングを繰り返していた時期のことを回顧して、次のように述べておられた(「36年間を振り返って」平成17年4月)。
「両陛下のお姿から学んだことは、悲しみの折にもありました。事実に基づかない多く批判にさらされ、平成5年御誕辰(ごたんしん)の朝、皇后様は耐え難いお疲れとお悲しみの中で倒れられ、言葉を失われました。言葉が出ないというどれほどにか辛く不安な状態の中で、皇后様はご公務を続けられ、変わらずに人々と接しておられました。
当時のことは私にとり、まだ言葉でまとめられない思いがございますが、振り返ると、暗い井戸の中にいたようなあの日々のこと自体よりも、誰を責めることなくご自分の弱さを省みられながら、ひたすらに生きておられた皇后様のご様子が浮かび、胸が痛みます」と。
週刊誌は、上皇后陛下や皇室の方々に対し、いつまでも事実に反する記事を書き散らして、良心に疚(やま)しさを感じないのか。なお、ここに引用した宮内庁の文章の表記に、少し気になる箇所がある。
先ず、上皇后陛下について「上皇后“さま”」と記している点。皇室典範と同特例法では、天皇・皇后、上皇・上皇后について、公式の敬称は「陛下」、それ以外の皇族を「殿下」と定めている(もちろん、個人的な心情を吐露するような場面では、“様”などの敬称も認められる)。
上文中、上皇后陛下以外の敬称は、当然ながらその規定に従っている(上皇“陛下”、眞子内親王“殿下”)。この不統一はどうしたことか。又、「秋篠宮」というのは、文仁(ふみひと)親王殿下ご自身に与えられた宮号(みやごう)だ。その宮家の家族の方々が、一律に帯びられるものではない(三笠宮家のご長男、寛仁〔ともひと〕親王は宮号を世襲される前に亡くなられたので、同親王が当主だった独立の世帯は「寛仁親王家」と呼ばれていた)。
よって、文中にある「秋篠宮眞子内親王殿下」との表記は、正確には「秋篠宮家の(ご長女)眞子内親王殿下」とあるべきところだろう。