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  • 執筆者の写真高森明勅

立憲民主党の「論点整理」


上皇ご夫妻、天皇ご一家、秋篠宮ご一家=2018年12月、皇居・御所(宮内庁提供)

立憲民主党の「論点整理」

6月11日、立憲民主党は昨年7月から続けて来た「安定的な皇位継承を考える会」での討議(幹事会14回、全議員会合7回)を踏まえて、「象徴天皇制の未来のために―安定的な皇位継承を確保するための論点整理」を発表した。


同「論点整理」の特徴をいくつか指摘しておく。


その1。同党が実施した専門家へのヒアリングのみならず、これまでの内閣での議論の積み重ね(具体的には小泉内閣における「皇室典範に関する有識者会議報告書」と野田内閣における「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」)を尊重し、参考にしている。この点については、次のように説明されている。「両文書は緻密で質の高い文書である上、国家と国民統合の象徴である天皇と皇室制度に関しては、与野党の垣根をはらい、これまでの検討結果を尊重しながら議論を積み重ねていくことが肝要であると考えたからである」と。


その2。具体的な方策を検討するに当たって、基本的な「視点」を明確に設定している。具体的には以下の通り。(1)安定性を制度的に担保できること。(2)歴史と伝統をふまえていること。(3)国民の自然な理解と支持を得られること。


その3。側室不在、非嫡出の継承否認―という皇室の歴史上、かつてない“極めて窮屈な”継承条件をきちんと織り込んでいる。「過去においては、非嫡系による皇位継承が広く認められてきたことが男系継承を可能にしてきたのであるが…、現行典範においては皇位継承資格者は嫡出子のみ…とされている。…晩婚化少子化が進む現代において、しかも嫡出要件がかかる現行制度の下、男系男子による継承を維持することは、皇位継承を極めて困難にするし、偶然性に委ねる余地があまりに大きい」と。


その4。国民が皇室の在り方を理解し支持している背景にまで踏み込んでいる。「(Ⅰ)国民の心情の体現者、(Ⅱ)わが国の歴史の継承者、(Ⅲ)国家と国民の安寧に向けた祈りの具現者としての天皇の存在と振る舞いへの国民の共感がある」と。


その5。政党としての政治的なスタンスをなるべく前面に出さないように配慮している。これは「国家と国民統合の象徴である天皇と皇室制度に関しては、与野党の垣根をはらい…」という姿勢を貫いているためだろう。いわゆるリベラル的な価値観を感じさせるのは、次の一節くらいだろうか。

「現代における我が国の、男女間の人格の根源的対等性を認める価値観は一過性のものではなく、時代の流れの中で日本社会に根をおろし確たる価値観として定着してきたものであり…」しかも、硬直した男女平等イデオロギーを一方的に打ち出しているのではなく、「人格の根源的対等性」について指摘しているのだから、政治的な立場に関わりなく、これを否定する人は殆どいないはずだ。


以上、取り敢えず5つの特徴を取り上げた。


これらは、他党や他のグループの提案の妥当性を吟味する場合も、“物差し”として使える普遍性を備えている。


〔1〕これまでの内閣での議論の積み重ねをきちんと汲み上げているか。

〔2〕安定性を担保でき、歴史を踏まえつつ、国民の理解と支持を得られる方策になっているか。

〔3〕側室不在という皇室の全く新しい局面に対応できているか。

〔4〕国民が皇室の存在と振る舞いに共感する理由にまで視線が届いているか。

〔5〕天皇・皇室が国民に広く受け入れらるべきであり、現に広く受け入れられている事実に鑑み、自党の政治的スタンスを“敢えて”前面に出さない配慮がなされているか。


皇位継承の安定化にむけて貴重な問題提起がなされたことを喜びたい。

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