高森明勅
「剣璽」とは?
『産経新聞』(2月15日付)が「剣璽(けんじ)等承継の儀」 について、変な説明をしている。
「天皇の印『御璽(ぎょじ)』、国の印章『国璽(こくじ)』
などを承継する剣璽等承継の儀」と。 「印」と「印章」の不統一は単純ミスだろう。
それよりも、この説明では儀式名の最初に出てくる 「剣」がすっかり消えている。
「剣」とは何か?
言うまでもなく皇位の“しるし”の三種の神器(じんぎ)のうちの 「宝剣(ほうけん=草薙剣〔くさなぎのつるぎ〕のご分身)」だ。
では「璽」とは?
御璽でも国璽でもない。
やはり三種の神器のうちの
「神璽(しんじ=八坂瓊曲玉〔やさかにのまがたま〕)」のこと。 新しい天皇が皇位を継承されるのに伴って、宝「剣」と神「璽」 を先帝から受け継がれ、併せて御璽と国璽も新帝のもとに移る。 その儀式が「剣璽等承継の儀」。
御璽と国璽は、儀式名では「等」として略されている。
この儀式は旧皇室典範の時代は「剣璽渡御(とぎょ)の儀」 と称して、御璽・国璽は儀式名からは全く削られていた。 それは同儀の主眼があくまでも「神器」を 受け継ぐことにあるからだ。
産経新聞の記事は本末転倒。 これは産経新聞の無知、不見識か。 それとも政府の役人が
そんな見当外れの説明をしているのか。