台湾では、社会と経済を深く傷付けずに、新型コロナウイルスによる犠牲者を最小限度に抑えることに成功した。長期にわたる全国一斉休校という、有害無益な愚策で子供や家庭を苦しめなかったし、自粛を巡って国民が分断されることも避けた。その経緯を熟知している藤重太氏は、日本の対応をどのように評価されるか。
「日本は数字的には欧米に比べれば感染者数・死者数とも抑え込んだ優秀な国のひとつなのかもしれない。しかし、これはあくまでも長い間日本人が作り上げてきた衛生観念、感染に強い生活習慣、医療従事者の自己犠牲的使命感、世界に冠たる民度の高さ、不安の中でも他人への思いやりを忘れず辛抱強く自粛要請に耐え従う精神力をもつ日本国民一人ひとりの生命力の結果でしかない。
一方、国民を先頭に立って守るべき日本政府はどうだろうか。『初動に出遅れ』『水際対策に失敗』して『国内に混乱を招き、経済的な大ダメージを負ってしまった』ことは認めなければならない。
そして、『何もできない政府』、『一丸になれない国会』『機能しない行政』『後手後手の決断』、『国民を守れない国』であったことも認めなければならないのではないだろうか」(『国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦』)
手厳しい表現ながら、具体的な事実に裏打ちされた指摘だ(詳しくは同書参照)。多額の税金を投じて、これから(7月末近くになって!)布製マスクを8000万枚、追加して配ろうとしているズレまくりぶりに、日本政府の対応の駄目さ加減がよく示されている。台湾では、1月下旬の段階で、早々と“国内での”マスク増産に向けて、対応を開始。
通常なら3カ月から半年掛かるマスク製造ライン60本の設置プロジェクトを、僅か1カ月余りで完成させ、早くも2月には問題解決の第1歩を踏み出していた。今や、台湾は短期間のうちに世界第2位のマスク生産大国になっており、日本の安倍首相が「各世帯に布製マスク2枚を配る」と胸を張って発表した同じ4月1日には、蔡英文総統は「台湾での封じ込めは成功している。
台湾は決して世界の感染拡大を傍観せず、各国と防疫協力を進めていく」と述べて、被害を拡げるアメリカをはじめ世界各国にマスクを贈る、大掛かりな義援活動を始めている。日本とは、立っているステージが違い過ぎる。