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2019年05月09日

神器継承と政教分離

新天皇ご即位後最初の儀式は何か。皇位の“しるし”である「三種の神器(じんぎ)」のうち“剣”と“璽(玉)”を国璽(こくじ)・御璽(ぎょじ)と共に受け継がれる「剣璽等承継の儀」と、同時刻に“鏡”が奉祀(ほうし)されている宮中三殿の賢所(かしこどころ)で行われる「賢所(かしこどころ)の儀」だ。三種の神器は法律上、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」(皇室経済法第7条)とされる。その神器を「皇位とともに」継承された事実を改めて示すのが、これら2つの儀式。

皇位の世襲継承に伴い神器を受け継ぐのは、古代以来の伝統的儀式だ。剣璽は祭祀の対象ではない為、「剣璽等承継の儀」を国事行為としても憲法上、何ら問題はない。むしろ、皇位の「世襲」を定める憲法が当然、予想し、要請するところとも言い得る。

一方、賢所の儀は、神道祭祀の形式で行われるので、憲法の政教分離に配慮して、国事行為ではなく皇室の行事とされた。また政教分離への配慮とは別に、「内閣の助言と承認」を不可欠とする国事行為は、そもそも皇室の“祭祀”にはなじまない。天皇の神聖な領域への世俗権力の介入を意味するからだ。三種の神器は勿論、皇室の伝統的な観念では不離一体だ。しかし法的な扱いでは、上述の理由により2つの儀式を区別した。

(本稿は「東京新聞」5月2日付に掲載されたものに手を加えた)

神器継承と政教分離

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