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  • 執筆者の写真高森明勅

旧宮家養子縁組プランを通説による違憲審査基準でチェック!


旧宮家養子縁組プランを通説による違憲審査基準でチェック!

旧宮家養子縁組プランの合憲性について内閣法制局は説得力のある説明ができなかった

(令和5年11月15日·17日の衆院内閣委員会での答弁)。


そこで改めて、標準的な学説に基づく違憲審査基準を当て嵌めて、判定しよう。

先ず違憲審査基準については以下の通り。


「違憲審査基準につき、代表的な説は…人種や門地による区別の場合は、その区別の目的が真にやむをえない…公共的利益を追求するもので、手段がこの目的の達成に是非とも必要であることを政府側が論証する責任を負う厳格な審査(必要不可欠な公共的利益❲公益❳の基準)によるとする」

(渋谷秀樹氏『憲法 第2版』)


これを旧宮家養子縁組プランに対する内閣法制局の説明に適用すると、どのような結果になるか。


先ず「目的」については、憲法の要請に応える為、とした。具体的には第2条(皇位の世襲)·第5条(摂政)·第4条第2項(国事行為の委任)を挙げた。


この目的については一先ず、審査はパスと判定できるだろうか(詳しくは後述)。


次に「手段」はどうか。

敢えて「摂政」·「国事行為の委任」を先に取り上げる。現行法(皇室典範·「国事行為の臨時代行に関する法律」)に照らせば、現時点でそれらに当たることができる皇族が既に何人もおられる。

具体的には以下の通り。


秋篠宮殿下、悠仁親王殿下、常陸宮殿下、皇后陛下、上皇后陛下、敬宮殿下、佳子内親王殿下、彬子女王殿下、瑶子女王殿下、承子女王殿下。


よって、これは審査不合格。

と言うより、現状では目的の中に摂政や国事行為の委任を含ませる必要自体がないのではないか。


では「世襲」はどうか。


憲法における「世襲」の概念は男性·女性、男系·女系の全てを含むというのが政府見解であり、学界の通説だ(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』、園部逸夫氏『皇室法概論』他)。


そうであれば、皇室典範を改正して上記の内親王殿下·女王殿下方にも皇位継承資格を認めれば、これらの方々は「国民平等」原則の例外であることを憲法自体が認めているので、憲法第14条(法の下の平等など)との関連で疑問の余地がない方法で、即座に憲法の「世襲」要請に応えることが可能だ。


従って、旧宮家養子縁組プランが必要不可欠=「目的の達成に是非とも必要である」とは到底言えない。そもそも側室不在、「嫡出」限定継承という条件下では、養子縁組プランによって皇位継承の安定化を確保できず、世襲要請に応えられない。


現に、内閣法制局もそれらの「論証」をなし得ていない。よって、これもアウト。

こうして、旧宮家養子縁組プランは標準的な違憲審査基準に照らして、少なくとも現在の内閣法制局の説明のままでは、残念ながら「憲法違反」と結論付ける他はない。

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