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  • 執筆者の写真高森明勅

旧宮家系国民男性で皇籍取得意思を持つ人、安倍氏「いない」


旧宮家系国民男性で皇籍取得意思を持つ人、安倍氏「いない」

ネット上にこんな発言があったとか。

「(皇位継承の将来への不安については)旧皇族一族がいるので大丈夫です。…私は復帰者としては不適格」


発言者の名前は敢えて伏せる。だが、「旧皇族一族」とは何か?


いわゆる旧宮家養子縁組プランの対象とされる旧宮家系国民男性は、生まれた時から1分、1秒もかつて皇族だったことがないどころか、既に親の代から一般国民。なので、その人達が自ら「旧皇族」と名乗ったり、他人がそのように呼んだり、そうした人達が新しく皇族の身分を“取得”することを皇籍「復帰」などと表現したりするのは、はっきりと間違いだ。私はこれまで、そのことを繰り返し強調して来た。


上の一文を書いた人物は、「復帰」という言い方に未練を残しながら、さすがに「旧皇族」という詐欺まがいの表現は、もうそのままでは使えないと自覚しているようだ。


それにしても「旧皇族“一族”」とは、何とも奇妙な呼び方ではないか。昔、忍者漫画に「風魔一族」とか登場していたような気がするが。ところで、その「一族」の中から皇籍取得の意思を持つ人は「いる」のか、どうか。


皇籍を取得すれば、国民としての自由や人権が全面的又は大幅に制約され、それまでの人間関係や仕事などもそのまま続けられなくなって、まさに人生が一変する。しかも婚姻の場合と違って、(高齢の養親はいても)生涯を共にする伴侶がいる訳でもない。当事者として重く大きな決断が必要だ。


それを「特攻隊に志願するほどの大きな覚悟と勇気を必要とする決断」と表現した男系論者がいた(新田均氏、『別冊正論』Extra.14)。この喩えが適切かどうかはともかく、深刻かつ重大な決断が求められることはその通りだろう。


果たして、そのような決断をする人が実際に「いる」のか、どうか。そこが問われる。


以前、有力な政治家が故・安部晋三元首相が現職の首相だった当時に、サシ(一対一)の場で直接、安倍氏にそのことを尋ねたところ、「それが、いないんです」という返答だったという。政府が水面下で当事者の意向を確認したり、“身体検査”をしたりした結果、該当者が見付からなかった、ということだろう。


この話は、その政治家と私の他に、2人の国会議員と1人の弁護士がいる席で伺った。

その政治家のお人柄と生前の安倍元首相との関係性から考えて、信頼できる証言だろう。


何より、安倍氏自身が首相として国会で「(旧宮家の皇籍離脱を指示した)GHQの決定を覆すということは全く考えていない」(平成31年3月20日、参院財政金融委員会)という考え方を示していた。政府もこれまで、養子縁組プランの対象が憲法第3章によって自由と人権が保障される国民である以上、当事者の意向確認は制度化に際して必要不可欠な、最低限の前提的な手続きであるにも拘らず、対象者への意向確認をしたことはなく、これからも行うつもりはない、という不自然な答弁を繰り返して来た(令和2年2月10日、衆院予算委員会での菅義偉内閣官房長官の答弁、同3年3月26日、参院予算委員会、加藤勝信内閣官房長官の答弁など)。


それらも、水面下でのネガティブな調査結果を踏まえた態度と理解すれば、それぞれ納得がいく。


そもそも、「安倍一強」と呼ばれ、憲政史上最長の在任期間を誇った安倍政権下で、(安倍氏は男系派にとって最大の“希望の星”だったはずなのに!)旧宮家プランが1ミリも動かなかったという

不可解な謎も、上記の証言に照らし合わせると、たちどころに解ける。


先の皇籍取得「不適格」自認者の発言を信じるか、それとも安倍元首相の答えを信じるか。

確かに安倍氏も国会で嘘の答弁を繰り返した過去がある。しかしこの場合、どちらを信用すべきか迷う余地はないだろう。なお、同「不適格」自認者は後に、「復帰(新しく皇籍取得)したいと

思っている者はいるわけがありません。…私がベストと思っているのは…(当人に自覚がない)赤子のうちに(養子)縁組を行うことです」と述べているらしい。もはやコメントする必要もないだろう。



追記

プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」7月28日公開。

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