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執筆者の写真高森明勅

旧宮家プランに憲法違反の“疑い”があれば残念ながら即アウト


旧宮家プランに憲法違反の“疑い”があれば残念ながら即アウト

戸籍に登録されている国民のうち、旧宮家系男性“だけ”に限定して、「皇統に属する男系」という血統・家柄つまり“門地”を根拠に、婚姻を介さないで、これまで禁止されている養子縁組によって、特別に皇族の身分を取得できるようにする(=国民の中に、皇室への養子縁組が特権的に認められる身分とそれが認められない身分の区別を、新しく設ける)“旧宮家養子縁組プラン”。


それは憲法第14条が禁止する「門地による差別」に該当し(例外は皇統譜に登録されている天皇・上皇・皇族のみ)、憲法違反の疑いがあるとの指摘がなされている(東京大学大学院教授の宍戸常寿氏・元内閣法制局長官の阪田雅裕氏など)。


これに対して、説得力のある反論がいまだに出されていない。それどころか、指摘は憲法違反の疑い(疑義・疑念)があるという表現にとどまっていて、憲法違反とは断定されていない(だから大丈夫)、という訳の分からない釈明まで飛び出しているようだ。


他でもない天皇・皇室に関する事項であれば、その尊厳・権威を損なわない為に、たとえ僅かでも憲法違反の疑いが指摘されたならば、それを100%払拭できない限り、“アウト”と考えるのが当然ではないか。


畏れ多いが将来、憲法違反の“疑いがある”天皇が内閣総理大臣や最高裁長官を任命し、憲法改正・法律などを公布し、国会を召集し…等々という場面を想像すれば、それがいかに許されないかが理解できるはずだ。


しかも上記の通り、普通の国語力があれば、憲法違反なのは明々白々だろう。旧宮家だけ例外扱いする制度を正当化する為には、確かな“憲法上”の根拠を示す必要がある。


だが、その根拠となるべき「世襲」規定は、男系・女系、男子・女子を包含する(政府見解・学界通説)。だから、その「世襲」を維持する為には、これまで下位法である皇室典範によって排除されてきた内親王・女王の皇位継承資格を認めるのが、先決だ。


その対応策を速やかに(!)実施すれば、世襲の将来は格段に安定化する。


従って、旧宮家プランは世襲の為に必要不可欠な措置ではなく、憲法上の根拠を欠くので、とても正当化できない。そもそも学者・研究者ならば、重要なテーマであればあるほど、強い断定は避けて、敢えて慎重な表現を採用するのが、真実に対する謙虚さに基づく“普通”の態度だろう。


それを考えると、「疑い」の指摘に“過ぎない”などとは、決して言えないことが分かる。


天皇・皇室という取り分け重い課題について、信頼されている学者や専門家からストレートに“憲法違反の疑い(疑義・疑念)”という致命的な指摘がなされた事実に、何ら衝撃を受けないとしたら、そちらの方が私には驚きだ。


旧宮家プランを本気で実現しようする場合、憲法違反の疑いが指摘されたならば、直ちにその疑いを晴らすべく全力で努めなければならないことは、改めて言うまでもない。にも拘らず、断定でなく疑いに“過ぎない”などと言い逃れようとすることは、正面から反論“できない”ことを自ら認めるに等しい。



追記

①天皇陛下のご著書『テムズとともに 英国の二年間』(紀伊国屋書店)が初刷り7万部からスタートし、既に10万部まで増刷という。これは嬉しい。


②7月23日に特別イベント「愛子さまを皇太子に」が東京都内で開催される。普段のゴー宣道場より大きめの会場が用意されている。登壇者は、漫画家の小林よしのり氏ほか道場師範(不肖私も)に加えて、ゲストとして弁護士で元衆院議員、今は国際法を学びつつある菅野志桜里氏と

コラムニストで『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』などのご著書がある矢部万紀子氏が予定されている。更にもう一人、特別ゲストを招くべく交渉中らしい。今回は入場料が無料(!)。


その後、後夜祭として立食パーティーが予定されている。そこでは師範たちによる「LIVE語らいタイム」が行われ、先のイベントでの議論を再整理し、その先への展開などが語られるはずだ。

それが終わると、師範も参加者に交じって懇談することになっている。こちらの参加費は食事と飲み放題付きで1万5千円。私の感覚では決して安くないが、もし可能ならば皇位継承の安定化への機運を盛り上げる為に参加して欲しい。


…と書いていたら、応募者が殺到し、有料企画の後夜祭は募集を開始した翌日(5月20日)に定員オーバーとなり、早々と締め切ってしまうことになった。皆さんの熱意は心強く、頭が下がる。


イベント本体の応募枠は広めで、第1次募集の締め切りは6月2日正午の予定。だが、応募状況次第で前倒しの可能性も(詳しくはゴー宣道場のサイトを参照)。


③5月26日午前8時にプレジデントオンラインの連載「高森明勅の皇室ウォッチ」が公開予定。

今回は、天皇・皇后両陛下が来る6月9日にご結婚30年をお迎えになることに関わって、両陛下が苦しまれた「男児を産め」という旧時代的なルールに基づく重圧をいつまで続けるのか、という問題提起を試みる。

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