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執筆者の写真高森明勅

憲法は「女系天皇」を排除していないとの理解が憲法学者の主流

更新日:2021年5月19日


5月10日に開催された皇位の安定継承を目指す有識者会議の第4回会合では、憲法学者ら4人からヒアリングを行った。


国士舘大学特任教授の百地章氏は「女系天皇は憲法違反の疑いがあり許されない」とされた。同氏は以前、「万一の場合には、皇統を守るために、女帝さらには女系の選択ということもあり得る」(『憲法の常識 常識の憲法』)と明言されていた。 その後、変説されたのだろうか。


それに対し、最高裁元判事の岡部喜代子氏は、「女系天皇を認めることが憲法違反であるとの説は採ることができない」と否定されている。 これは政府の見解も同様だ。

但し、「強固な反対」に配慮して、一代限りの女性(男系女子)天皇と女性宮家を主張されたようだ。


京都大学名誉教授の大石眞氏は、男系の伝統を尊重すべきことに触れつつ、「内親王・女王にも皇位継承資格を認めるとともに女系の皇族にも拡大するのが基本的な方向性としては妥当」とされ、東京大学教授の宍戸常寿氏も「憲法第2条の『世襲』は女系を排除するものではなく、国事行為およびそれに準ずる活動は女系の天皇でも可能」と述べておられたようだ。

両氏はそれぞれ、憲法学の主流を代表し得る学者だ。


以上について、現時点での大まかな感想を述べておけば、憲法・法律の専門家としての判断が、専門外の政治や歴史などを中途半端に顧慮することで、少し不透明化しているケースもあるように見受けられる。


男系の“伝統”と言われるものの実態については、これまでの歴史学の研究蓄積について、「やまとごころ(双系〔方〕)」「からごころ(男系)」というキーワードを用いて、私なりに整理したブログを以前、書いている(2月5日)。 https://www.a-takamori.com/post/210206

「強固な反対」をどう評価するかは、皇位の安定継承へのリアルな探究と、多くの皇室を敬愛する国民の思いに従って、結論を出すべきことだろう。


いずれにせよ、百地氏の孤軍奮闘は貴重ながら、憲法が女系を頑なに排除するものでは“ない”ことが、権威ある専門家の共通理解として、改めて確認されたことは意味がある。

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