• 高森明勅

旧宮家への意向確認「考えず」

最終更新: 3月21日


旧宮家への意向確認「考えず」


2月26日の衆院予算委員会分科会で加藤勝信内閣官房長官は、皇位の安定継承を巡り、「男系」維持を唱える人々が拘(こだわ)っている旧宮家系男性に新たな皇籍取得を可能にする方策について、当事者への意向確認は「現時点で考えていない」と答弁した(産経新聞、同日13時28分配信、共同通信、13時30分配信)。


実は、令和2年2月10日の衆院予算委員会でも、当時の菅義偉官房長官が、当事者への意向確認は今後も「考えていない」旨の答弁を行っていた。対象となる人々は皆さん、言う迄もなく国民だ。当然、強制はあり得ない。ご本人の同意が最低限のスタートラインになる。


にも拘(かかわ)らず、意向確認を考えていないということは、政府が「現時点」では、旧宮家案を具体的な選択肢に含めていない、と述べたに等しい。例の「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重み“など”を踏まえ“ながら”、“慎重かつ丁寧”に検討を行う必要がある」という、目眩(くら)まし効果抜群の霞ヶ関文学(官僚作文術)の最高傑作的文言は、今回も活用された。


しかし、その重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行った結果、非嫡出の継承可能性が無い等の条件下では、「女性・女系」を認めることが不可欠、というのが小泉純一郎内閣の時の有識者会議報告書のロジックだった。


だから、今回の答弁で注意すべきは、「現時点で」という限定をどう評価するかだろう。

菅答弁では、「今後も考えていない」という趣旨だったのに対し、現時点では考えていなくても、今後は分からない(選択肢に加えるかも知れない)、という含みを感じさせる言い回しになっている。


旧宮家案の現実的な困難さを政府は深く理解しているはずだが…。さすがに、菅答弁の真意に気付いた男系維持論者の反発を、少しでも弱める配慮をしたのか。

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