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執筆者の写真高森明勅

雲間よりさしたる光に


雲間よりさしたる光に

雲間よりさしたる光に

11月10日の「祝賀御列の儀」。天候に恵まれ、最高のパレードになった。可能なら私も沿道で両陛下のご車列をお迎えしたかった。スタジオで番組中、私の頭の中に繰り返し2首の和歌が響いていた。今年の歌会始での両陛下の御作だ。お題は「光」。天皇陛下は次の御製(ぎょせい)をお詠(よ)みになった。

雲間より さしたる光に 導かれ われ登りゆく 金峰(きんぷ)の峰に

金峰山は山梨県と長野県の県境にあり、標高2,595メートル。「その山容の秀麗高雅な点では、秩父山群の王者である」(深田久弥氏)とされる。この御製では皇位を象徴していると理解できる。ご即位への決然たるご覚悟が窺える。しかも、その金峰山の遥かな高みの雲間から一条の光が差している。非常にスケールの大きな歌柄であり、「光に導かれ」とあるのは、陛下の謙虚さのご発露に他ならないだろう。

皇后陛下の御歌(みうた)は以下の通り。

大君と 母宮の愛(め)でし 御園生(みそのう)の 白樺冴(さ)ゆる 朝の光に

明るく清々(すがすが)しい。先ず、上皇陛下(当時の天皇陛下)をごく自然に「大君」とお詠みになっている(「父宮」でなく)。赤坂御所の白樺は、上皇陛下と上皇后陛下が出会われた軽井沢にちなむ。さらに上皇后陛下の“お印(しるし)”にもなっている。この御歌には上皇・上皇后両陛下への深い感謝のお気持ちが込められている。それを、朝の光にくっきりと浮かび上がる白樺に託して、詠まれた。迷いを振り切って凛とされた、皇后陛下の潔いご態度が伝わる。


ちなみに、今年のお題の「光」は平成で二回目。これは異例だ。明らかに、上皇陛下が次の時代を祝福するお気持ちから、特にこのお題を選ばれたと考えるのが自然だ。11月10日はまさに「光」溢れるパレードになった。沿道でお迎えする人々の表情も皆、晴れやかだった。


「君が 笑えば 世界は 輝く…ごらんよ 光は 君と ともにいる」

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