憲法には何ヵ所か、「天皇」と「国民」を併記している条文がある。以下の通り。
第1条
「天皇」は、日本国の象徴であり日本“国民”統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本“国民”の総意に基(もとづ)く。
第7条
「天皇」は、内閣の助言と承認により、“国民”のために、左の国事に関する行為を行ふ。
第96条第2項
憲法改正について前項の承認(衆参両院の3分の2以上の賛成を踏まえ、国民投票での過半数の賛成ー引用者)を得たときは、「天皇」は、“国民”の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
先ず、第1条。
天皇と国民が、「象徴するもの」と「象徴されるもの」という関係に置かれている。この両者の関係は、「代表するもの」と「代表されるもの」が“同質”である(代表=一部分によって、それの“属する”全体を表し示す)のに対し、“異質”である(例えば「鳩と平和」)ことを前提とする。
この点から、天皇が国民では“ない”のは、明らかだろう。もし天皇も国民ならば、「代表」にはなり得ても、「象徴」であることはできない。後段に、天皇の“象徴”という地位が「国民の総意に基く」とあるのも、上記の件を考え合わせて、天皇が国民では“ない”ことを踏まえた規定と見るのが、最も整合的だろう。
次に、第7条に「国民のために」、第96条2項に「国民の名で」とあるのも、それぞれ、天皇が国民では“ない”と理解してこそ、素直に納得できる。そもそも、憲法は“第1章”に天皇(および皇室)に関係する条文をまとめ(例外的に第88条に「皇室財産」についての規定がある)、一方、国民については“第3章”に一括する。
こうした章立て自体からしても、憲法上、天皇(および皇族)と国民が“別の”範疇(はんちゅう)に属するのは、疑う余地があるまい。
以上のように、憲法を素直に読む限り、佐藤幸治氏(憲法学者・京都大学名誉教授)による学説整理にある「C説」、つまり天皇(および皇族)は国民ではない、という結論以外は導き難いはずだ。
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