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  • 執筆者の写真高森明勅

横田滋さんを悼む


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横田滋さんを悼む


横田滋さんが老衰で亡くなられた。

87歳。

長女のめぐみさんが北朝鮮に拉致されて以来、42年間にわたり、娘を取り戻そうと渾身の努力を続けて来られた。

にも拘らず、遂にめぐみさんと再会できないままになった。

残念だ。

同胞の1人として非力を嘆くしかない。


昔、東京・千代田区にあった九段会館で、横田ご夫妻と若い世代が公開で対話をさせて戴く催しがあった。

当時は中学2年生だった私の長女も、最年少でそれに加わらせて貰った。

終了後のレセプションでは、めぐみさんが拉致された時の年齢と同じ年だった私の娘に、ご夫妻がしきりにお声をかけて下さった。

その時の、滋さんの優しく哀(かな)しげなご表情が、今も忘れられない。


憲政史上最長の存続期間を誇る安倍政権は、拉致問題の解決を最重要課題に掲げているはずだが、これまで一体、何をして来たのか。

安倍晋三首相は従来、アメリカのトランプ大統領に拉致問題への助力を頼んだことを、あたかも自分の手柄のように、繰り返し吹聴して来た。

本気で、アメリカがリスクを取ってでも尽力してくれると、思っていたのか。

めぐみさん達を取り戻すのは当然、他ならぬ日本国政府それ自身の最優先の責務(!)である。

残念ながら安倍首相にその不退転の覚悟は感じられない。


以前、小泉純一郎首相が拉致被害者の一部の方々の帰国を実現させた時に、上皇后陛下は次のようにおっしゃられた。


「小泉総理の北朝鮮訪問により、一連の拉致事件に関し、初めて真相の一部が報道され、驚きと悲しみとともに、無念さを覚えます。

何故私たち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識し続けることができなかったかとの思いを消すことができません。

今回の帰国者と家族との再会の喜びを思うにつけ、今回帰ることのできなかった人々の家族の気持ちは察するにあまりあり、そのひとしおの寂しさを思います」(平成14年)


―上皇后陛下は「無念さ」という強い言葉を使っておられる。


「何故私たち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識し続けることができなかったか」


(Photo by Tomoki Mera)

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