「旧宮家」皇取得籍を巡る懸念
皇室法の第一人者と言うべき園部逸夫氏。旧宮家系国民男性の皇籍取得案を巡り、以下のような指摘をされていた。「戦後の皇籍離脱…から70年以上を経過し、旧皇族の男系男子子孫の方は昭和22年10月まで皇族であった方を除き、皇族としての経験をお持ちではない。
そうした方が皇族になるということは、当事者にとり大きなご決断であると拝察される。また未成年である方の意思をどのように判断するかということも、よく考えなければならない問題だと思われる。
今後、仮に旧皇族の男系男子子孫とそのご家族の方々のご意向を確認することが必要になったとしても、議論のどの段階で、どういった範囲の方に、どのような方法で確認することが関係者に強制にならず、また、負担にならないかなどについて十分考えなければならないであろう。
また、いったん皇族となられたものの、その後、本人の意思でまた一般国民に戻りたいという場合にどう対応すべきか、あるいは、将来、皇室に男子の数が多くなった場合、本人の意思に反しても皇籍から離脱させることができるようにするのか、など制度化する場合には慎重な議論を要する様々な論点がある。
そのほか、旧皇族男系男子子孫を皇族とする場合、既に皇室内にいらっしゃる方と新たに皇室に入られる方との間に何らかの『合意』を要するのかということも検討が必要と考える(養子という形で皇族となる場合も同様)。ただこの場合、皇室の方々のご意向をどのように把握するのかという問題や、この男系男子子孫を皇族として受け入れるかどうかということについての皇室の方々のご意向は政治的意味合いがあるのではないかという問題もあり、憲法第4条との関係で考え方をどう整理するのかさらに検討が必要である。
なお、旧皇族の男系男子子孫の方々をどのような条件や手続きで皇族にするかにもよるが、既に皇室内にいらっしゃる方と新たに皇族となられる方との一体感と言うか、皇室という大きなご家族としての一体性がどのように醸成されるのかということも懸案事項ではないかと考える。こうした皇室の内側に関する事柄は一般国民にはなかなか想像できないことかと思うが、国民の間に、皇室の一体性についての疑問や不安感が生ずるおそれがないような仕組みや手続きが望まれると思う」(『皇室法入門』)
ーーしかし政府は結局、当事者の「ご意向の確認」それ自体を“今後も”しない、という選択を行った(令和2年2月10日、衆院予算委員会での菅官房長官の答弁)。
それが何を意味するかは、余りにも自明だろう。
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