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  • 執筆者の写真高森明勅

異色の戦争漫画


異色の戦争漫画

異色の戦争漫画 小梅けいと氏の『戦争は女の顔をしていない』(KADOKAWA)。異色の戦争漫画だ。原作はノーベル文学賞をジャーナリストとして初めて受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの主著。独ソ戦において実際に戦場に赴いた500人にものぼる女性たちの証言をまとめた(岩波現代文庫に邦訳あり)。


アニメーション監督の富野由悠季氏(「機動戦士ガンダム」シリーズなど)は、同書を漫画化した「作者の蛮勇に脱帽する」と絶賛しておられる。


独ソ戦と言っても、一般の日本人には馴染みが薄い。しかし、当時のソ連の人口1億9千万人のうち、軍人・民間人を合わせて実に2700万人もの命が失われたという(速水螺旋人氏)。想像を絶した数だ。人類の戦争史上、最大の犠牲者数とされている。


その戦場に、徴兵された男達とは違い、志願して出向いた多くの女性達がいた(100万人以上という)。それも、軍医や看護師、洗濯部隊などだけでない。狙撃兵や高射砲兵、飛行士なども。彼女達はどのような体験をしたのか。本人達の証言を集めた著書を元に、絵として、漫画として再現している。


少女漫画っぽい絵柄だけに、逆にリアルな凄惨さが伝わる。勿論、歳月を経て取材に応じているので、全てを正確な事実と見ることはできないだろう。だが、そのような記憶として残る体験をしたという事実は動かない。祖国を愛した女性達の記憶を通して、底知れない戦争の悲惨を、等身大で垣間見ることができる。


第1巻が出たばかり。続きも是非読みたい。

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