『石原信雄回顧談』(全3巻、ぎょうせい)が刊行された。 竹下内閣から村山内閣まで7代の内閣で一貫して(事務方の)官房副長官を務めた石原氏は、現代史の稀有な生き証人。
その「回顧談」はとても貴重だ。
私も早速、入手した。
ところが、目次を眺めていると第3巻の第4章の見出しに「平成天皇」という語がある。
インタビュアー(上崎正則時事通信社総務局長)もこの語を使っている(82頁)これは、天皇陛下が崩御(ほうぎょ)された“後”に「追号」として奉られるはずの呼び名だ。
ちなみに「昭和天皇」との追号が奉られたのは平成元年1月31日だった。 国民に当て嵌めれば、死後に付けられる“戒名(かいみょう)”のような性格のもの。
それを今の時点で、こともあろうに公刊物で使うなど、甚だ非礼で不見識(ご譲位後でも不可)。意義ある出版物での誤りだけに残念だ。 以前も、ある刊行物で同じ間違いを見掛けた。 気が付いた時は必ず出版社に連絡して、担当の編集者に直接、穏やかに伝えている。
今の天皇陛下は、普通なら記事の中でただ「天皇陛下」とお呼びすれば良い。
文脈上、特に歴代天皇と区別するなどの必要がある場合は、「今上(きんじょう)陛下」とか「今上天皇」。 きちんとした出版社の編集者や通信社の幹部すら、「今上」という語を知らないのだろうか。