• 高森明勅

退位の儀式

8月24日、神社本庁の大講堂で 「政教関係を正す会」の総会と研究会。

同会の会長は國學院大学名誉教授の大原康男氏。 私は幹事の末席を汚している。 幹事は他に東京大学名誉教授の 小堀桂一郎氏や麗澤大学教授の八木秀次氏など。

但しこの日は欠席。 ちなみに監査役は前防衛大臣で衆議院議員の稲田朋美氏ら。 総会の議長は私が務めた。 総会で承認された平成29年度事業大綱には、 次のような項目も。 「平成の御代替(みよがわり)における『即位の礼』、 『大嘗祭』などに対する政教訴訟の判例に鑑み、 皇室典範特例法による天皇の譲位に係る一連の儀式に対して、 どのような政教訴訟を提起される可能性があるかを検討し、 儀式が伝統に則って執り行われるよう啓発してゆくとともに、 必要に応じて関係各所へ適切な対策を講ずる」(第2項) 引き続き研究会。

その司会も私が務めた。

主題は「御代替の諸儀と政教問題」発表者は2名。

先ず、同会の常任幹事で国士舘大学特任教授の百地章氏が 「御代替わりの儀式をめぐる憲法問題」と題して研究発表。 内容は以下の3本柱。

1平成の御代替わりを振り返って 2平成の御代替わりー大嘗祭をめぐって 3次の御代替わりに向けてー退位(譲位) の儀式について 憲法学の立場から明快な発表。

私には特に3が興味深かった。 そのアウトラインは次の通り。

(1)基本的な考え方ー「現行憲法」と「皇室の伝統」 をもとに考えるべき。 退位のための儀式は憲法が明示的に 禁止しているわけではないので、 皇室の伝統を踏まえてその当否を考えるべき。

(2)「皇位の世襲」と「退位」の儀式ー皇室典範特例法の 制定により「皇位継承に関する一連の重要な儀式」として、 「退位」と「即位」のための儀式が考えられても良いのでは?

(3)現行憲法と「天皇の儀式」ー内閣法制局の見解は 「天皇が皇位を譲り渡す」ような形式は、天皇の地位が国民の 総意に基づくとした憲法1条に反する、というもの。

この見解を踏まえてどう対処すべきか。 皇室典範特例法にあるように 「譲位」ではなく「退位」と表現し、 しかも「退位の事実」を宣言するだけであれば問題はないはず。

(4)「退位の儀式」と「即位(践ソ)の儀式」の在り方について(略)。

発表後、司会から念の為に、 平成への改元に際して閣議で決定される“前”に、 天皇陛下のご聴許を戴き、伝統的な「天皇の元号」 としての本質は守られた事実を、補足的に言及した。 次に京都産業大学名誉教授の所功氏が 「天皇譲位の来歴と儀式の在り方」と題して発表。

1「譲位」の初見と尊称 2「太上天皇」の初見と法制化 3「譲位」(→践ソ)の儀式 4「剣璽(けんじ)」と鈴印鑰(れいいんやく)・大刀契 (だいとけい)等の承継 歴史学の立場から堅実な発表。

中でも3は『(貞観)儀式』『代始和抄』 『御昇壇記』などを手がかりに、 歴史上の「譲位の儀式」の具体的な内容や、 そこで読み上げられる宣命(せんみょう)の文言などが つぶさに報告され、会場の関心を呼んだ。

先に百地氏が提起された、 現行憲法下の「退位の儀式」を考える上でも、欠かせない知識だ。

「いわゆる生前退位(譲位・廃位)の天皇一覧」 「御譲位・御即位と改元、並びに祭祀・行事等の期日 についての望ましい案」(神社新報時の流れ研究会作成) などの資料も配られた。 後者は取り分け貴重。

改元による国民生活への影響に配慮して、 予め元号を内定して発表するとの案も 政府内部で検討されている、との報道がある。

その場合、ご聴許を巡り、 些か複雑な問題を孕むのではないか (その中身はここでは敢えて触れないが) という点について、司会として発表者にお考えを伺った。 お2方のご発表は、いずれ詳細が会報に掲載される。 このテーマについて今の時点で望み得る 殆ど最高水準の内容だった。

改めて感謝。

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