民主主義が自由や権利の保障と対立する場面があり得る。
更に、ポピュリズムが無謀な戦争を招き寄せる局面で、
民主主義は全く無力だ。
そうした危険性に予めどう備えるか。 自由主義的民主主義や立憲主義的民主主義には、 明確にこうした問題意識がある。
同じ問題意識から、君主制の役割についても再評価できるだろう。 憲法学者で北海道大学准教授の西村裕一氏の天皇についての言及は、 そうした観点から参考になる。
西村氏いわく、 「天皇は日本国の象徴である以上、 憲法の基本原理である基本的人権や平和主義といった 普遍的価値を体現する存在でなければならない。 …衆院小選挙区制の導入以降、選挙という民意によって 正統化された内閣への権力一元化が進んだ。 民主主義は憲法の普遍的価値を踏みにじることもある。 だからこそ、憲法は民主主義の正統性とは別のラインに天皇制を置き、
民意によっても乗り越えられない普遍的価値を
体現させようとしたと考えることもできる」と。
「民主主義は…普遍的価値を踏みにじることもある」。 それに対抗できる正統性を持つ、 「民意によっても乗り越えられない普遍的価値」の“砦”として、 「天皇」を位置付けている。