• 高森明勅

自衛隊「明記」改憲で何が変わる?



自衛隊「明記」改憲で何が変わる?

今回の参院選の結果が憲法改正にプラスになるのか、どうか。改めて言う迄もなく、憲法改正の焦点は、憲法9条2項の「戦力」不保持規定を見直す事。それを放置して「自衛隊」を明記すれば、自衛隊は「戦力」未満の非「軍隊」のまま固定化してしまう。ところが、自衛隊“明記”改憲に「大きな意義と効果がある」との意見がある(百地章氏「改憲勢力を結集し今秋に備えよ」産経新聞7月18日付)。具体的には4点を指摘されている。 その1。「自衛隊違憲論の解消」。 その2。「(自衛隊の)法的安定性を高める」。 その3。「国民の防衛意識が高まる」。 その4。「近隣諸国に警告を発し、それが対外的抑止力につながる」。 いずれも首をかしげる。 まず1。「憲法に自衛隊が明記されれば、違憲論の余地はなくなる」と言うが、果たしてそうか。自衛隊の装備や規模などによって、9条2項で禁止されている「戦力」に該当すると判断されたら、直ちに違憲論が噴出するだろう。憲法に根拠を持つ内閣(5章)であっても、例えば「臨時会の召集」(53条)に応じなければ、その対応の違憲性が問題視される事になる。当たり前の話だ。そうでなければ立憲主義が無意味になる。


次に2。「法律にしか根拠を持たない自衛隊」が、あたかも「法的安定性」を欠いているかのような言い方をされている。しかし、政府を構成する中央省庁で憲法に明記されているものは皆無。全て「設置法」という「法律にしか根拠を持たない」。ならば、それらも「法的安定性」を欠いているのだろうか。誰もそんな事は考えていないはずだ。


更に3。「国民投票を通じて、全ての国民が防衛問題と真剣に向き合うことで、『他国任せ』の無責任な風潮は改まり…」と言うが、自衛隊を「戦力」未満に押しとどめる限り、(風潮ではなく)事実として「他国任せ」は改まらない。それで「防衛意識が高まる」道理はあるまい。


最後の4。「『自衛隊の保持』を明記することは『自分の国は自分で守る』との日本国民の決意の表明」と言うが、むしろ逆だろう。9条2項に手を着けない限り、日本国民はいつまでも「戦力」を持たず、他国に依存=従属し続ける、という意思の「表明」でしかない。

そもそも、憲法改正はそうした他国への依存=従属を“断ち切る為”だったのではないか。自主独立に向けた改憲か、依存=従属をいつまでも維持する(名ばかりの)改憲か。それを見極める必要がある。

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