終戦記念日のNHKスペシャル
人に勧められて終戦記念日のNHKスペシャルを観た。 2・26事件を取り上げていた。 これまで知られていなかった、同事件を巡る海軍側の詳細かつ膨大な極秘資料を発掘。それを丁寧に読み込み、既に90歳、100歳を越えた関係者を探し出して、インタビューを行っている。民放ではちょっと真似が出来ないだろう。こういう番組を観るとNHKの存在意義を感じる。
但し、事件が起こった直後の海軍に対する昭和天皇の迅速、的確な行動を「不安・動揺」という文脈で扱っているのは、見当外れ。むしろリーダーとして危機管理能力の高さが浮き彫りになった場面だ。又、事件に対応した海軍の動きを、一次史料に基づいて細かく正確に描き出しているのに、事件の顛末の大きな歴史的評価の部分は殆どファンタジー。
昭和天皇が反乱の鎮圧に主導性を発揮して権威を高めた(これは事実)→天皇の神格化に繋がった(?)→無謀な戦争へ(??)。
何ら実証性の無い、余りにも類型的で無茶苦茶な連想ゲーム。相変わらず、戦争の原因をひたすら日本の国内“だけ”に探ろうとする、自虐的と言うより自閉的な歴史の見方。当たり前ながら、戦争には必ず「相手」(敵国)というものがが存在する。戦争の原因を公正に探る為には、相手との“相互関係”の中で考える必要がある。
貴重な極秘文書にメディアとして初めて光を当てた画期的な番組だっただけに、余計ガッカリしてしまう。なお、資料に出て来る「上御一人」という言葉(“天皇”を指す)を、ナレーションでは間違って「かみおひとり」と訓(よ)んでいた。勿論(もちろん)、「かみごいちにん」が正しい。私が知っているNHKのディレクターに、この訓み方の間違いだけはメールで指摘して、担当者への伝言を頼んだ。
すると早速、返事が届いて、彼も間違いには気付いていたようだ。この言葉については、さる保守論壇の重鎮が文章の中で、「神御一人」と繰り返し書いているのを見て、こちらが恥ずかしくなったのを思い出す。編集者も校閲者も気付かなかったのだろうか。私もこの種の誤りにはくれぐれも注意しよう。