• 高森明勅

紀宮殿下の“深い”ご公務論


9月21日、天皇・皇后両陛下には、

西日本豪雨の被災者へのお見舞いとして、

先週の岡山県へのお出ましに続き、

愛媛・広島両県をご訪問になった。


ご高齢の両陛下が日帰りで四国・中国地方の

2つの県を回られるハードスケジュール。


しかも、岡山県の時と同様、天候不良によるご延期の為、

ご執務がある金曜日と重なってしまった。


陛下は午後7時頃に帰京された後、

御所でご執務に取り掛かられた。


内閣から届いた上奏書類は、

その日の内に決裁されるのが原則だからだ。


また同日、「敬老の日」にちなみに、

皇太子・同妃両殿下には、東京・墨田区の

高齢者施設にお出ましになった。


両殿下は、両陛下が続けて来られた

「こどもの日」「敬老の日」に当たり

関係施設を訪問される事を、秋篠宮・同妃両殿下

と共に引き継がれている。


ところで天皇陛下のご長女、

黒田清子(さやこ)様(ご結婚によって皇籍を

離れられる迄は紀宮〔のりのみや〕清子内親王殿下とお呼びしていた)

は皇族であられた頃、折に触れて、天皇陛下や皇族方のご公務について、

述べておられた。


それは、陛下のお側で歳月を共にされ、

又ご自身もご公務に携わられた、

当事者だけが語り得る貴重なご証言だ。


謹んでその一部をここに掲げさせて戴く。


「公務は常に私事に先んじるという陛下のご姿勢は、

私が幼い頃から決して崩れることのないものでした。

国際、国内情勢、災害や大きな事故などに加え、

宮中祭祀にかかわる全てが日常に反映されるため、

家族での楽しみや予定が消えることもしばしばで

残念に思うことも多々ありましたが、そのようなことから、

人々の苦しみ悲しみに心を添わせる日常というものを知り、

無言の内に両陛下のお仕事の重さを実感するようになりました。

そうした一種の潔さが何となく素敵だとも感じていました」


「両陛下のお間の絆は、陛下の全てに添われていく

皇后様のご姿勢にも、楽しく時にはおかしな事を共に

笑い合われる微笑ましい場面にも感じられますが、

その深さの源にあるのは、皇后様が、皇太子、天皇

というお立場を常に第一に考え行動される陛下のお考えを、

誰よりも尊重され支えてこられた来し方で

はないかと感じています」


「私の目から見て、両陛下がなさってきた事の多くは、

その場では形にならない目立たぬ地味なものの積み重ねであったと思います。

時代の要請に応え、新たに始められたお仕事も多くありましたが、

他方、宮中での諸行事や1年の内に最少でも15、

陛下はそれに旬祭(しゅんさい)が

加わるため30を超える古式装束をつけた宮中三殿への

お参りなど、皇室の中に受け継がれた伝統は、

全て受け継いでこられました」


「累々と受け継がれてきた伝統を守ることと

人々の日常に心を添わせることが、

少しの矛盾もなくご生活に入っている、

そのような日々を重ねておられることが、

象徴としての存在である陛下、そして皇后様に

人々がリアリティを感じている由縁ではないかと

思います」(平成16年、お誕生日に際して)


「国内外の務めや宮中の行事を果たす中には、

失敗も後悔もあり、未熟なために力が尽くせなかったと

思ったことも多々ありました。

また…目に見える『成果』という形ではかることのできない

皇族の仕事においては、自分に課するノルマや標準をいくらでも

下げてしまえる怖さも実感され、

いつも行事に出席することだけに終始してしまわない

ように自分に言うい聞かせてきたように思います。

どの公務も、それぞれを通して様々な世界に触れ、

そこにかかわる人々の努力や願いを知る機会を得た

ことは新鮮な喜びと学びでした」


「第1回目から携わることになった

ボランティアフェスティバルや海洋文学大賞を始め、

幾つかの行事が育ち、また実り多く継続されていく

過程に立ち会うことができたのは幸せであり、

そうしたものは、訪問しご縁があった国々と同様、

この先も心のどこかに掛かるものとして

あり続けるのだろうと思います」


「36年という両陛下のお側で過ごさせていただいた

月日をもってしても、どれだけ両陛下のお立場の厳しさ

やお務めの現実を理解できたかはわかりません。

他に替わるもののないお立場の孤独を思うときも

ありますが、大変な日々の中で、陛下がたゆまれる

ことなく歩まれるお姿、皇后様が喜びをもってお務め

にも家庭にも向かわれていたお姿は、私がこの立場を

離れた後も、ずっと私の心に残り、これからの日々を

支える大きな力になってくれると思います」

(「36年間を振り返って」平成17年)


天皇陛下のご譲位、皇太子殿下のご即位を控え、

改めて銘記したいご発言だ。

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