天皇の祭祀中で最も重大な大嘗祭。 大嘗祭では国民が献じる新穀が最も大切。
その新穀を献じる悠紀(ゆき)・主基(すき)両地方を、 「亀卜(きぼく)」という古来の作法で選ぶ。
その亀卜の実態について、 昭和の大嘗祭に実際に奉仕した人物の証言がある。
以下の通り。
「陛下の御手もとには、まず、
その候補地として悠紀地方にて3県、
主基地方にて3県が進められる。
そうすると陛下は、その内の2県に御加点
(御爪〔おつめ〕の印〔しるし〕)される。
この御加点2県の名を密封した封書を卜串(うらぐし)という。
この卜串が卜者(ぼくしゃ)に渡されるのである。
昔は神祇官(じんぎかん)の卜部(うらべ)が行うが、 大正大礼(たいれい)以来は登極令(とうきょくれい)の規定によって、
掌典(しょうてん)が奉仕している。
そして亀卜を行った上、卜合、不卜合は卜串の包みの表面に
書して大礼使(たいれいし=当時、即位関連行事を取り仕切った役所)
長官を通じて御手元に返上する。
ゆえに卜者はその内容、つまりどの県が卜合であったか否かは、 全然わからないのである。 したがってこれは卜者の決定ではない。
その決定は神と陛下、否(いな)、 陛下の御決定に神も加わらせ給(たま)うと 見るべきものであろう。
…はじめて天皇の御位(みくらい)に即(つ)かれる 重大祭事の稲を得る方法として、まず以上のごとき亀卜をもって、 斎田を卜問う故実が、永く続き、今に行われていることは誠に 尊貴な手振(てぶ)り〔=習わし〕というべきであろう」 (川出清彦『祭祀概説』)と。
安倍内閣が、新しい天皇のご即位を 「5月1日」に先延ばししたのは、天皇の「重大祭事」における 「陛下の御決定に神も加わらせ給う」神聖な領域に、 世俗の政治権力があらかじめ“制約”を設けた事を意味する。 僭越この上ない無礼な振る舞いと言う他ない。
なお、拙文が掲載される予定だった 『月刊Hanada』2月号の巻頭は 「独占インタビュー 安倍総理、新たなる決断」。 安倍首相にジャーナリストの有本香氏が インタビューを行っている。
これでは、同じ号に私の文章は載せられないだろう。
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