• 高森明勅

日米安保条約破棄?

最終更新: 2019年6月29日

アメリカのブルームバーグ通信は6月24日、複数の関係者の話として、トランプ氏が側近との私的な会話の中で、日米安保条約の破棄(!)に言及したと報じた。 「(同条約は)日本が攻撃されれば米国が援助する事を約束しているが、米国が攻撃されても日本の自衛隊が支援する事は義務付けられておらず、あまりにも一方的だ」と。 万が一、日米安保条約が破棄されれば、わが国の外交・防衛政策は根底から覆る事になる。これに対し、米国務省は翌25日、「今回の報道には根拠が無い」などと否定。但し一方で、「我々は、同盟国が防衛責任に対する公平な負担を負うことを望んでいる」とも付け加えた。 果たしてトランプ氏は報じられたような発言をしたのか。“した”と見るのが普通。それはトランプ氏の本音であり、同時に日本へのブラフだろう。ブラフだから過敏に反応する必要は一先ずない。しかし、本人がそのような不公平感を抱いているのは、ほぼ事実として織り込んでおく必要がある。今後も、(軍事合理性とは無関係な)米国製高額兵器の大量購入など自分の要求を貫徹したい場面などで、こうしたメッセージが繰り返される可能性がある。それは中国や北朝鮮などとの関係にも、はっきりと悪影響を拡大しかねない。


これまで日米安保条約の意義を強調する人らは、「非武装中立」論者などを空想的平和主義と非難して来た。それは勿論、当たっていただろう。しかし一方、同条約がいつまでも維持されると決めてかかる考え方も、十分「空想的」だ。


改めて言う迄もなく同条約は、どちらかの国が「終了」の意思を伝えたら、その1年後に終了する(第10条)。僅か1年では、日本側は何の手当ても出来ない。だから、条約破棄がブラフとして成り立つのだ。そうであれば、早くからアメリカに決定的に依存しない防衛体制を確立しておく事こそ、唯一の“空想的でない”防衛問題への対処の仕方だろう。その為には事実上、個別的自衛権すら縛っている憲法9条2項「戦力」不保持規定を改める事が、前提として欠かせない。


この度、浮かび上がった日米安保条約維持への不透明感は、憲法改正が避けられない事実を日本国民に突き付けている。

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