憲法学者で九州大学准教授の井上武史氏が(昨年1月の時点で) 憲法改正の手順について述べておられた。 ご譲位を可能にする特例法のやり方が参考になる、と。 これはさすがだ。
あの特例法は「国民統合の象徴」である 天皇の皇位継承の在り方そのものを変更するルール作り。 氏は次のように述べる。
「憲法1条で定められる天皇の地位・身分の変動に 及ぶものであるから、日本国憲法下の統治機構の根幹に 関わる問題である。 内容的には憲法改正に匹敵する重みを持つと言っても、 言い過ぎではないだろう」と。
だから法形式は恒久法でなくても、 極めて慎重な配慮を必要とした。
特に国民の間に「分断」を持ち込むような事態は 絶対に避けなければならなかった。 これは憲法改正も同じだ。
賛否を巡っ激しい対立が生まれ、 国会でギリギリ3分の2の賛成、 低い投票率の国民投票で危うく過半数という、 形ばかり改正の要件を満たしても、駄目。 それでは憲法の権威が喪われる。 権威なき憲法は十分な実効性を持ち得ない。
事実上、憲法が「死ぬ」。 それを避ける為には特例法に劣らない丁寧さが求められる。